アルプスの少女「ハイジ」を読む

本屋さんで「100分de名著」という番組のテキストを見かけ、今月は「アルプスの少女ハイジ」が取り上げられていたので、もう一度読み直したくなりました。

本は家にあったので、あらすじはよく覚えているのですが、抄訳だったのでしょう、今回読みなおして、いろいろな発見がありました。今回私が読んだのは、「偕成社文庫 完訳版ハイジ1・2 ヨハンナ・シュピーリ作 若松宣子訳」です。

小学生のお子さんにも、大人の方にもぜひ読んでもらいたい、優れた作品だと思いました。

純真さ、気持ちを率直に表すこと

何よりも心に残ったのは、ハイジの純真さ、素直さ、そして自分の気持を率直に表すことでした。

だからこそ、人とすぐにつながることができる。「人嫌い」だったはずのおじいさんとも、ペーターとも、ペーターのおばあさんとも。

そしてフランクフルトに行ってから、そこで出会ったクララや召使いのセバスティアン、クララのおばあさまたちともそうです。

一方、「形」にこだわるロッテンマイヤーさんにとっては、それがとても怖いことであり、受け入れることができないことなのです。ですから、その率直さをとがめられ、辛い思いをすることになります。

「本を読んで泣きわめいたりしたら、本を取り上げて返さない」と言われてしまいます。

ハイジは本を読んでもけっして泣かなくなりました。が、それはたいへんなことでした。気持ちをおさえて、泣かないようにするのに、とても努力しなくてはならなかったのです。

(途中略)

ハイジはほとんどなにも食べなくなりました。夜になってベッドに入ると、とたんにふるさとのできごとが目にうかび、家を思って、だれにもきかれないように、まくらに顔を押しつけて、静かに泣きつづけるのでした。

偕成社文庫 完訳版ハイジ1 ヨハンナ・シュピーリ作 若松宣子訳

おじいさんのところに戻って「息もできなくて、とても苦しかった」と振り返っています。

人を思いやる気持ち

ハイジはいつも他の人のことを思いやる気持ちにあふれています。目の見えないペーターのおばあさんのことをいつも気にかけ、優しく接します。それも、とても自然に。

ハイジが自分自身の気持ちに率直であるからこそ、他の人は心を開いて自分の気持ちを率直に伝えられます。そしてハイジはそれを相手の身になって考え、良かれと思うことを、また率直に行動に移していきます。

フランクフルトからスイスに戻ってからの描写に、特にそれが表れています。お金をどう使うか。ペーターのおばあさんにパンを買ってあげる。

作者自身が信仰の篤い人だったのでしょう。それが随所に表れていますが、おじいさんにも信仰の大切さを伝え、おじいさんが教会に出かけるきっかけを作ります。その結果、おじいさんは村の人々に受けいられるようになるのです。

お医者さんのクラッセン先生。娘を亡くして悲しみで心がいっぱいになって、山を訪れた先生も、自分の悲しみを(遠回しに)ハイジに話し、そして自然の力とハイジやおじいさんとの関係の中で癒されていきます。

そして、言うまでもないクララ。山の自然の力だけではなく、ハイジやおじいさんが自然との適切な橋渡しをしてくれたからこそ、都会の中で押し込められていたものが開放され、歩けるようになっていきます。

時代を超えて

この本が出版されたのは1880年。今から140年も前のことですが、時代を超えて今の私達に訴えるものがたくさんあります。

作者シュピーリの人間への愛情があるからでしょう。同時に、人間を多面的に見る観察眼の鋭さもあちこちに表れています。

今回読み返してみて、子供時代に読んだ時と大きく違うのは、育てる側の人、特にクララのおばあさまの人物像がとても印象に残ったことです。これは、私の年齢からすれば当然のことですね。

人を包み込む温かさ、そして人の本質を見抜いた上で、その人に合わせて大切なことを示していく姿。一つの理想的な大人の姿が描かれています。

また、都会の中で「作法」や「仕事」で心に壁を作る人の姿が描かれていて、それは、今の日本ではその状況がさらに進んでいます。これも、一つの大きな視点を与えてくれました。

読書は、さまざまな気づきを与えてくれます。今回も、とても楽しい一時をすごすとともに、いろいろ考えるきっかけも与えてもらいました。

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