ピアノは、左右の手が別々の動きをします。その時、脳はたくさん活動しています。

今、左右の手が別々の動きをする段階に入った生徒さんがたくさんいます。この段階に入ることはピアノを学ぶ上で、1つ大きなステップを上がることになるので、脳もそれに対応していかなくてはなりません。

両手を動かす時、脳は多く活動している

両手を動かしている時の脳の活動を見ると、左右同じ動きのときよりも、左右反対の動きをするときのほうが、運動に関連する脳の領域が、より多く活動しています。つまり、左右別々の動きをするときのほうが、脳にとって「大変」なわけです。

古屋晋一 ピアニストの脳を科学する(春秋社) P.27,29

右手を左側の脳が、左手を右側の脳が動かしているというのは、よく知られています。

ただ、それがバラバラに動いているわけではないのは、間につなぐ橋があるからです。

その橋を通して、左右の脳の間に情報が行き来します。ですから、別々に動かすときには、つられないように脳もはたらく必要があるわけです。

ピアニストの脳は「余力」がある

ところが、ある研究で、左右別々の動きをしているピアニストの脳活動を測ってみたところ、驚いたことに、左右同じ動きの時の」脳活動と差がありませんでした。(中略)

ピアニストの脳は、両手を独立して動かしても、複雑な情報処理をする必要がないということで、もっと複雑で素早い動きをする「余力」を残しているとも言えます。

古屋晋一 ピアニストの脳を科学する(春秋社) P.29~30

子供の頃からずっと訓練をしているピアニストの脳には余力があって、左右別々の動きにも対応できる、ということなのです。

慣れるまでは練習が必要

最初からどんどんできるわけではありません。慣れるまではやはり練習が必要です。

今、ちょうどその段階にきている生徒さんたちも、それぞれ「弾きにくい」「つられる」と言いながら、練習しています。

でも、それは「ピアノらしい」動きにつながっているので、楽しみでもあるようです。知っている曲もメロディーと伴奏で弾けるようになっていきますから、頑張って練習しています。

お子さんの場合には、この段階がスムーズです。しばらくすると、上手に左右違う動きができるようになってきます。

人間の脳というのは、ずいぶん柔軟性のあるものであると感心するとともに、ピアノを弾くことで、能力そのものが変わっていく、向上していくということを改めてうれしく思いながら、生徒さんの成長を見ています。