今、バッハのフランス組曲を練習していますが、今週は、最終曲、速いテンポのジーグの譜読みをしています。

速い曲は、つい、速いテンポで弾く練習を繰り返しがちですが、実はゆっくり練習することがとても大切なのです。

ゆっくり練習することで筋肉に覚えさせる

ゆっくり練習する方法の最初の段階は、力をしっかりかけて、ものすごくゆっくりしたテンポで一つずつ「筋肉に覚えさせる」意識で弾くことです。

先日の大野先生のセミナーの時に、このことは質疑応答の中で「鍵盤と指とのコネクトを作る」段階として先生が取り上げていらっしゃいました。

実は、かつては私もついつい速いテンポでの練習が多く、ミスタッチがなかなかなくならない傾向がありました。

何年か前にドビュッシーの練習曲を弾いた時もそうでした。見かねた先生が「こうやってゆっくり一つずつ弾く練習をすると安定します。」と改めて(実は以前にも別の曲の時に教えていただいていたのですが)教えてくださったのですが、「これを全部やるのですね。気が遠くなりそうです。」などと言ってしまいました。

そういう意識でいては、なかなかミスタッチは減りません。

ある時、アシスタントの先生が何かの折に「私達は、このものすごくゆっくり弾く練習を、それこそいやというほどします。」と言ったことがありました。

その時、演奏家としてお客様に聴いていただく意識で練習する方の練習への意識の高さが実感として分かりました。

ついつい、「技術があるから。」と自分とは切り離して考えがちですが、その過程で地道な練習を積み重ねていることがよく分かったのです。

ゆっくり練習して響きを確認する

指に覚えさせる時には、力をかけて一音ずつ弾きますので、手の使い方は考えますが、響きについては二の次になります。

もう一つのゆっくり練習する目的は、響きを確認することです。こちらは、一つ一つの音についてタッチを考えながら、あるいは、一つのフレーズについてそのフレーズの性格を考えながら、響きを作っていく練習です。

速いテンポだと感覚がついていきません。ですから、ゆっくりと練習しながら響きのイメージをより具体的にし、同時に身体の使い方を考えていくことになります。

この段階をていねいにしていくことで、速いテンポでも響きのある音で演奏することができるようになります。

練習の質を上げることの積み重ねで演奏の質を上げていく

今の先生のところにレッスンに伺うようになってから、演奏家としてピアノを弾いている方たちと同席する機会が持てるようになりました。

時にレッスンが前後して、その方のレッスンを見せていただけたり、逆に私のレッスンの場にいて感想を述べてもらったりしたこともあります。

その中で感じたことは、当然といえば当然かもしれませんが、練習の質がものすごく高いということです。それを、以前は「プロの演奏家だから」「技術があるから」と自分と切り離して考えていました。

当時は、仕事としては学校で教えていて、ピアノは趣味ということもあったかもしれません。でも、ここ数年で、それは違うということが分かってきました。

今の自分なりの技術ではあっても、練習の質を上げていくことで演奏の質を上げることはできるし、その蓄積が技術そのものの向上にもつながります。

それを意識しながら、また、ゆっくり練習を積み重ねていきます。