こんにちは。たうらピアノ教室の田浦雅子です。

早くも10月。もう今年も残り3ヶ月です。私にとっては、ピアノ教室立ち上げという大事業(私としては)があったので、いつもにも増して時の流れの速さを感じた今年です。

少し前のことになりますが、このピアノ教室を始める前の8月下旬に、私は埼玉大学時代の恩師の松原正子先生のもとに伺いました。

そもそも、私がロシアピアニズムを学ぼうと思ったのは、松原先生のレッスンを大学時代に受けたことに始まります。でも、松原先生ご自身がこの奏法を、どうやって学んだのか伺ったことはなく、「私の先生はロシア人で……。」というお話をたった一度、聞いたことがあっただけでした。

2年ぶりにお会いした松原先生は、80歳を超えたとのことですが、全く年齢を感じさせない動きで、本当にお元気でいらっしゃいました。事前に、私がピアノ教室を始めることをお話しておいたので、Ray Lev先生監修の楽譜を用意して、「これ、あなたの生徒さんで弾ける人がいたら、使うといいわ。」とおっしゃって貸してくださいました。

松原先生が芸大の専攻科に在籍していた時、アメリカからRay Lev先生がいらっしゃったのだそうです。 Lev先生監修の楽譜の冒頭に書いてあるプロフィールによると、1912年に生まれて、すぐアメリカに渡った方だそうです。お父様はロシア時代は職業音楽家として活躍していた方で、お家で教育を受けたとのこと。ですから、ロシアの奏法を身につけていたのでしょう。

松原先生は、 Lev先生の奏法に対して「こんな合理的な奏法はない。」と思ったのだそうです。 Lev先生がアメリカに帰られるまでの2年4ヶ月という短期間で、しっかり学ばれたのでしょう。手の形は、ホロヴィッツと同じように、指を伸ばし手の内側で支えて弾きます。学生時代に私も「響きを内側に当てて。」「指の付け根で支えて。」とずっと言われていました。

「ショパンの舟歌のこの部分を弾いたときに、先生が”You got it!”とおっしゃったのよ。」と実際に弾きながら話してくれました。キラキラした水のしぶきが見えてくるような音。松原先生にとって、どれほど印象深い、思い出深いフレーズだったかが音からも伝わってきました。

お借りしてきた Lev先生監修の楽譜を家に帰ってからよく見てみました。まず、特長的だったのは、バイオリンのボウイングと同じように、手首の上げ下げを記号で表してあることです。インターネット検索で見つかった数少ない Lev先生にまつわる日本語の記事の中に、高橋アキさんが手首の「up 」「down」をたくさんやって……というエピソードを語っていましたが、手首の動きをとても重視していたことが楽譜からもわかります。

選曲はなかなかおもしろくて、1960年代の出版なのですが、バロック・古典派・ロマン派・近現代(出版当時のではありますが)の音楽がバランスよく含まれています。

特にバロックのものは、日本では知られていない作曲家の作品が含まれているので、ぜひ弾く機会を持ちたいと思いました。