こんにちは。たうらピアノ教室の田浦雅子です。

ロシアのピアニズムは、「歌う」ということをとても大切にします。メジューエワの本にも、よく出て来ました。

ピアノでも「歌う」、という言葉。

 

紆余曲折を経て、私がロシアピアニズムに魅力を感じるのは、私が声楽、特にオペラが好きだからかもしれません。

 

これは、最初にオペラを見たときの体験が大きいです。

私が実際にオペラの舞台を初めて見たのは、大学1年生の時。ミラノのスカラ座の引っ越し公演。フレー二がミミを歌う「ボエーム」でした。まだ、字幕もない頃で、行く前に何度も何度もレコードを聴き、対訳とボーカルスコアを見比べ、時に訳を楽譜に書き込んで、一生懸命予習をして行きました。

もう、その舞台のすばらしいこと。ロドルフォたちの住むアパルトマンのわびしさと、クリスマスの広場の豪華さ。一転して3幕の別れの場面のシンプルな美しさ。

歌手たちの声の美しさ。演奏のすばらしさ。もう、とにかく圧倒され、本当に感動し、世の中にこんな美しい、すばらしいものがあるのかと思いました。

特にフレー二の歌声は圧巻でした。特に弱音には、こんな小さい音がどうしてここまで(5階一番はじの学生席でしたから)聞こえるのだろう?という思いでいっぱいでした。しかも、その弱音のなかに表情がありました。

あれほどの感動は、人生の中でもそうはない、というくらいのものでした。今でも、私にとって一番好きなオペラは、やっぱりボエームなのです。

 

弱音でも届くというのはピアノも同じで、響く音であれば、弱い音でも通るのです。

そのことを学んだのは、今の奏法に変えてからでした。

最初の頃、よく「もっと小さい音で。」と先生から言われていました。「今くらいの音でも、十分客席の後ろまで届くから。」とも。

ピアノではあっても、フレー二のミミのあの歌声、あの表現のイメージに少しでも近づきたい、一つの遠い目標ではあります。