先日のリハーサルで、現在は同じ門下にいる先輩と休憩時間に奏法についての話をしました。

手の支えを作ることで下部雑音をなくす

その方は、今年はスクリャービンの前奏曲を演奏します。音が上に上がりとても美しいスクリャービンでした。

「ほんとうに浅いところをねらうように言われているのだけれど、それが難しくて、つい深くなってしまう。『下部雑音』が出てしまうのよ。」

下部雑音というのは、ピアノの鍵盤が一番下に下がった時にする音。いわゆる「しっかり弾く」時にカタカタという感じの音が鳴るのですが、その音のことです。

スクリャービンは響きを混ぜることで、美しい音楽になります。そのためにはほんとうに浅いところ、音は鳴るけれども、鍵盤が下がりきったときの音は出さない、そこをねらって弾く必要があります。

「結局、手の支えなのよね。」という話になりましたが、ほんとうにそうなのです。手の支えをしっかり作ることでコントロールしていくことになります。

手の支えを意識して速い部分を弾く

今回、私は「フィガロの結婚の序曲」を弾くのですが、これがものすごくテンポが速いのです。その中で、支えをつくることの重要性を特に実感したのは、同音連打の部分です。

鍵盤の浮力を使って連打していきたいので、あらかじめしっかり支えを手の中に作り、支えの部分にだけ力を入れて、指先の力を抜いて弾いていきます。

うまく支えが作れた時は、テンポ通り弾けるのですが、鍵盤の戻りが間に合わなず、連弾の音が一つにくっついて聴こえてしまう時は、支えが不十分な時。これは、歴然としています。

同時に、後半に出てくる音階の下降形。この部分を弾く時もそうです。一つ一つの鍵盤を下まで鳴らしていては絶対にテンポに間に合いません。

練習の時は、とてもゆっくり一音ずつ、1本ずつの指に、力をかけて弾いていきますが、実際のテンポで弾くときには、鍵盤の底まで指を下げることはせず、浅いところをねらって、一気に下降していきます。

それでも、一般的にオーケストラで演奏されるテンポよりは遅くなってしまうのですが、このロシア・ピアニズムの奏法でなければ、今弾いているテンポでも、「フィガロの結婚」の序曲を弾くことはできなかっただろうと思います。

日常の練習の中で支えを強化していく

結局、日々の練習、筋トレをしていく中で、支えを強化し、できることを一つずつ地道に増やしていく、それしかありません。

確かに、私自身も最初に比べれば、支えができてきたことで、オクターブもずいぶん弾きやすくなりましたし、鍵盤の上のほうをねらって弾く音階も、ある程度弾けるようになってきました。

私の先生も、話をしていても常に指は動いて支えを作る時の筋トレをしています。やはり「弾ける手をつくる」これが重要なのです。

本番まであと2日。今ある力を最大限発揮できるように練習していきます。