先生のご著書。Amazonではすぐに品切れになってしまいました。私の生徒さんからも頼まれていたので、何冊かまとめて手元に置くことにしました。

ようやく重刷分が届いたので、また少し内容の紹介をしていきます。

身体の使い方について

先日、ロシアピアニズムを中心にレッスンしている大人の生徒さんとこの本についてお話しました。

その方は「ロシアピアニズム全体像がつかめて良かったです。ただ、音の出し方は、言葉ではなかなかつかめないものですね。大野先生のブログはずっと読んでいましたが、実際に身体の使い方のレッスンを受けてみると、読んだだけの時とは全然違います。」と言っていました。

例えば、肘について。

肘は少し内側に回転させた状態が基本だ。不必要に大きく回したり動かしたりすることはない。

中村紘子氏のレッスンで、肘を動かした生徒が戒められていたのを見た記憶がある。

「『響き』に革命を起こす ロシアピアニズム」p.88

実は、肘については、私の大学時代の恩師の先生であるレイ・レフ先生も「肘をこんなふうに動かしたって、音が変わるわけではありません。」とおっしゃっていたとのこと。

では、どうするのか。

そこで、肘の後ろ側を「ゆるめる」、または手首で前に動かしながら肘の後ろ側から身体の前方へ腕全体を「押し出す」イメージを持つ。

指先ではなく指の第2関節から手首、前腕の下、上腕の内側からわきの下まで一本の筋があるようなイメージで打鍵するといいだろう。


「『響き』に革命を起こす ロシアピアニズム」p.89

身体の使い方を学んでいくことは、意外に難しいことです。今まで、ずっとなじんでいた使い方に、つい、なってしまいます。

肘を取り上げてみましたが、肘だけではなく、肩甲骨も、肩も、手首も、指も、一つずつ意識しながら音を出してみる。地道にそういう練習を続けていくことで響きが変わってきます。

響きを捉えることについて

生徒さんの保護者の方で、ピアノ経験の長い方も読んでいて、「こんなふうに、音の出し方を考えたこともありませんでした。倍音、知りませんでした。」と言っていました。

第3章にもこれについて触れている部分があります。

なぜ、ピアノを弾く時の発想の中に、音色の観点がないか?

第1章でも触れたが、その理由のひとつに日本の住宅環境と気候が関係していると思われる。(中略)極端な例を挙げると、じゅうたんを敷いた和室にグランドピアノを置き、ピアノ本体の蓋は開けずに楽譜台をピアノの上にのせて指の強化練習をする方がいらっしゃるほどだ。これでは、たとえ響きを聴こうにも音の立ち上がりしか聴こえてこない。

もうひとつの理由は、日本人の几帳面な性格が関係しているようだ。日本人の多くは、「きちんと鍵盤の底まで弾く」「しっかり鳴らす」ことが正しい奏法だと思いがちだ。

「『響き』に革命を起こす ロシアピアニズム」p.92

基音の大きい小さいはわかりやすく、響きの多い少ないはわかりにくい。

弾いた時も、「しっかりした弾きごたえ」は実感しやすく、逆にできるだけすばやく打鍵し離鍵することは、実感しにくい。

音色、響きというのは目に見えません。この本にも書かれているように、響きを捉える耳を作るまでに時間がかかります。

でも、その響きを聴き取ろうとして、聴き取れるようになる。響きのある音色を出そうとして、響きのある音色が出せるようになると、そこにはまた違う演奏の世界が広がっていきます。