先日読んだ皆川達夫さんの「中世・ルネサンスの音楽」が良かったので、「バロック音楽」も読んでみました。

やはり、いろいろと学ぶことが多く、特に、バッハにつながるさまざまな流れがよく分かりました。

この本の最初のほうに「声楽から器楽へ」と書かれているように、このあたりから、鍵盤楽器も発達し、ピアノでも演奏されるような曲が作曲されるようになってきます。

演奏の自由度が高い

バロック音楽の特徴として挙げられている内容がいくつかありました。今、私が勉強中のフランス組曲で装飾音について、いろいろ考えつつ試していることとの関連で印象に残っていることとして、「演奏の自由さ」が挙げられます。

楽譜は、いわば建築の設計図、ないしは見取図程度のものである。この時代の作曲家には同時に名演奏家であった人びとが多く、したがって楽譜に多くのことを記す必要がなかったということもあったが、しかしそれ以上に、楽譜の簡略な表示法というものがバロック音楽にとって本質的な意味合いをもっている。

バロック音楽   2 バロック音楽の魅力  即興性と瞬間の芸術 P.65

これを読んで、ある意味、納得もしましたし、逆に、だからこその難しさを感じました。この後、ジャズとの比較で、装飾音についても述べられています。

トリルとかモルデントといった装飾音にしても、通奏低音にしても、それを演奏するための一定の枠があるにせよ、その枠の中での無限の可能性はその場その場の演奏家の選択にまかされていた。(中略)彼らは、その席のお客の顔ぶれを見定めた上で、装飾音の双方やニュアンスを考慮したといわれている。高座に上がって当夜の客の様子や反応をうかがい、おもむろに話の枕を決める日本の落語家などにも共通した、この徹底した職人意識がバロック演奏家の心構えであった。

バロック音楽  2バロック音楽の魅力 ジャズとの共通性P.66~P.67

なるほど、これを読むと演奏者の役割がとても大きいということが分かります。音楽の専門教育を受けた人の数が少なかった当時、楽器が演奏できる人は、作曲もできる。それから、職人としてその道を深く学んだ者だけが演奏している、という背景がよくわかりました。

イタリアでの誕生・発展

もう一つ、印象に残ったのは、バロック音楽の誕生・発展の中心はイタリアだったということです。

バロック音楽の場合、最後の集大成としてのバッハ・ヘンデルの存在が大きく、二人ともドイツ人であったために、私もつい、ドイツが中心のようにとらえていました。

バロック音楽の誕生の国、そして展開の中心舞台は、ほぼ終始してイタリアであった。その他の国々は、イタリアで開拓され展開した要素を受け入れ、その影響にもとに、それぞれの民族色を反映した独自の音楽を作り出していたのである。その意味で、バロック音楽史とはイタリアの奏する主題と、それにフランス、ドイツ、イギリスなどが付加する変奏曲から成るといういうことができようか。


バロック音楽   2 バロック音楽の魅力  バロック音楽の展開 P.50

バロック音楽の始まり、展開がイタリア・オペラと密接に関連していること、器楽もイタリア中心に発展してきたこと。音楽用語もイタリア語で書かれていることからも、なるほど、と思わせられます。

また、ヘンデルの「シャコンヌ」を以前、勉強した時に、「シャコンヌというのはどんな音楽なのだろう?」と調べてみたことがありました。

そのときには、あまりよく分からなかった部分がここに取り上げられています。フレスコバルディ(1583-1643)の時代に「変奏曲の一種として、低音に主題を置いて繰り返し、そのたびごとに上声を多様に変奏してゆく『シャコンヌ』あるいは『パッサカリア』という楽曲が行なわれていた」とのこと。

これも、イタリアでのことです。そして、フレスコバルディの弟子であるフローベルガーを通じてドイツのバッハ、ヘンデルへとつながっていくのです。

本を読む楽しみ

文字で音楽に「ついて」知ることが、演奏の上でどれだけ役に立つのか。確かに知識だけでは、役に立ちません。ただ、流れが分かることで、今まで「何となく」だったものがつながっていく楽しさがあります。

今回、この本を読んだことで、特に装飾音について今まで「どうしてだろう?」「どう弾いていったらいいだろう?」と考えていたことへの自分なりの考え方のヒントがありました。

そういうものに巡り会えるのも、読書の楽しみです。