歌詞と音楽の結びついた「歌」の楽しさ

私が所属する葵の会の定期演奏会が4月に行なわれます。今回、私はフィガロの結婚の中から、序曲と二重唱・独唱の伴奏を弾くことになっています。

ピアノ独奏曲とは違う、歌詞のついている音楽。歌詞を読み、音楽を見ていくと、いろいろな発見があって楽しく、また改めて「モーツァルトはすごい!」と感心することしきり。

同時に、フィガロの結婚の台本を書いたダ・ポンテという人の力にも目が向くようになりました。

詩のアクセントと音楽の流れ

まず、オペラアリアの歌詞は、基本的に定型詩になっていて、アクセントの位置も決まっていますし、韻もふんでいます。例えば、有名な、「もう飛ぶまいぞこの蝶々」のアリアも、きれいに韻をふんでいます。

これを作るというのは、言葉をほんとうにたくさん知っていて、イメージに合った単語を選ぶ力が必要です。

モーツァルトがその詩につけた音楽は、アクセントが小節の最初の拍になるように作られています。ですから、詩の流れがそのまま自然に音楽になっているのです。

詩の音節数と音楽

「もう飛ぶまいぞこの蝶々」の場合、それに加えて詩の内容と音楽が本当に一致していることが理解できてきました。

フィガロの歌うこのアリアは、ケルビーノという登場人物(少年なので、メゾソプラノの歌手が歌います)が軍人になるために出発するのを送る、という場面で歌われます。

曲が大きく3つに分かれているのですが、最初の部分と真ん中の部分とは歌詞の1行の音節数が違っていて、音楽そのものの雰囲気がガラッと変わります。

最後の部分はまた最初の歌詞が繰り返された上で、真ん中の部分の音楽に素早く切り替わり、第1幕の終曲にふさわしい盛り上がりがあって終わります。

単語の意味と音楽

さらに、単語の持つイメージが曲に反映されています。

いくつか例をあげると、楽語にもなっているbrillante(輝く)という言葉が使われているフレーズにはトリルが使われていて、きらきらした感じがします。

銃を肩にかつぎ、サーベルを腰に下げ、兜をかぶった軍人の姿を描写した部分になると、歯切れの良い和音の伴奏が続きます。

行進を表すmarciaという単語が出てくると、行進曲を思わせるリズムになります。

題名にもなっている「もう行けまいぞ、愛の蝶よ」(小瀬村幸子訳)という歌詞の部分は音階の下降形が続き、まるで蝶々が落ちていくようです。

歌詞と音楽の結びついた歌の楽しさ

歌詞を細かく見ていくことで、言葉と音楽の結びついた歌のすばらしさが分かりました。これを知って改めて曲を弾いてみると、さらに楽しく、毎回弾くたびに実によく作られていることに感心しています。

いつもと違う音楽を、いつもと違う側面から学ぶことができ、良い経験になりました。モーツァルトのピアノ曲を演奏する時にも、この経験を生かすことができそうです。

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