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2019.01.06

響きで音楽をつくっていく過程を考えてみる

大人の生徒さんで、奏法を学ぶ目的でレッスンに通ってくださる方がいます。ピアノ以外の楽器の経験もあり、とても音楽に詳しい方で、勉強熱心です。

その方のレッスンの中で、改めて音楽をつくっていく過程そのものが、奏法によって大きく違うということを認識したので、今日は、それについて書いていきます。

かつての私の過程

かつての私自身をふり返ってみると、大きく2段階だったと思います。ピアノを弾く知人の言葉から推測するところ、たぶん、多くの方も同じように感じているのではないでしょうか。

第1段階は、譜読みをして、音が並べられるようにする。一通り「弾ける」状態を作る、ということです。ある意味、この状態までは機械的とも思える部分があるかもしれません。

一応の強弱はつけますが、この段階では、まだ「曲想」を中心に考えることはしません。

そして、一通り音が並べられるようになってから、第2段階として「曲想」を考えていく。

この2段階です。

響きで音楽をつくる過程

今は、どうだろう?とふり返ると同じ2段階でも、大分違っています。ピアノの前に座った後は、いろいろなことを同時進行でやっている、という感じです。

第1段階は、手の使い方を考えながら、指遣いを決めていきます。私の場合には、指遣いを最初に決めることで、音が頭の中に入りやすくなるように思います。

これはピアノの前に座って音を出しながらすることもありますが、机に座って確認することもあります。

第2段階は、実際にピアノの前に座って音を出しながら、練習していきます。

第1段階で考えていた手の使い方・指遣いで良いかどうか、を音を聴きながら弾いていきます。

手の使い方、持っていき方によって、弾きやすさが変わるだけでなく、響きも変わっていくので、指遣いの確認と同時に、自分のイメージした響きが出ているかどうかもしっかり聴きながら練習することになります。

いわゆる「曲想」はこの中で同時に考えています。ですから、常に「私はどう感じているのだろう?このフレーズをどういう響きで弾きたいのだろう?」と自問自答している状態です。

決めたものを再現するわけではない

ただ、私の先生はよく「同じ演奏はない」とおっしゃいます。

その時によって、弾きながら、感じる音楽は変わっていくはず。だから、きっちりと決めたものを作ってそれを「再現」するわけではない、ということなのですね。

最初奏法を学ぶ期間が長くなり、自分自身の響きが変わってきたことを実感するようになってから、先生の言わんとするところがだんだんと理解できるようになってきました。

響きでつくっていくことで、より多くの表現の選択肢を持てるようになっていきます。そして、その時その時に応じて、瞬時に選択肢の中から選んでいけるようになっていくということなのですね。

「これで良い」というところはありませんが、少しでも多くの響き・表現の選択肢が持てるように、日々を積み重ねていきたいと考えています。