先生・保育士さんのレッスン

ピアノレッスンに来るメリット―お仕事でピアノを弾く方の場合―

お仕事でピアノを弾く方。例えば、保育士さん、幼稚園の先生の中に、もうすこし上手にピアノが弾けたらいいのに…とお思いの方もいらっしゃいます。

そういう方がピアノのレッスンに来るメリットは、どんなところにあるでしょうか。レッスンに通っていらっしゃるからこそのメリットを挙げてみます。

基本となる事柄を知ることができる

私の教室にも、幼稚園の先生、保育士資格を取るために大学に行っている学生さんが通っていらっしゃいます。

その方たちのレッスンをする上で、心がけているのは、「自分ひとりで楽譜を読んで弾けるようになることを目標とする」ことです。

例えば、指遣いを決めることの意味や、指遣いを決める上で考えていく要素。

指遣いを決めることで、部分練習がしやすくなります。自分がつまづくところを取り出して練習しやすくなりますし、どういう指遣いの時に間違いやすいのかということをてがかりに、自分のピアノの弾き方を客観的に見ることもできるようになります。

その上で、実際に指遣いを決めていく上では、基本的に多くの場合、このような指遣いで使う、というものを確認していきます。

例えば、伴奏でよく使われるドミソの和音を左手で弾く場合、指番号で531を使います。シレソも531、ドファラは521。

ある程度、この基本を知っていれば、次に出てきた時に、それを基準に自分で考えることができます。

練習の仕方を学ぶことができる

実際に練習していく上で、通して何回も弾く、という練習方法は効率が良くありません。

間違える部分はいつも間違えたまま、ということになりがちです。

レッスンに来ることによって、それを取り出して、どのように練習したらよいかを知ることができます。

「ここからここまで、移動が大きい場合は、この部分だけ取り出して、こういう練習をします。それができるようになったら、次はこういう練習…」というように、練習の仕方をお教えし、その場で実際に練習をしてみます。

「メトロノームの60から始めて、2ずつテンポをあげていってみましょう。」のように、テンポのとり方をお話しすることもあります。

ここでのレッスン中に、7~8回練習し、ずいぶんテンポを速くすることができるようになった生徒さんもいます。

少しずつ積み重ねていく

3月からレッスンにいらっしゃっている幼稚園の先生。来年の年明けに、オペレッタをするので、その曲のレッスンが目的です。

全部で7曲。実際に発表するときには、途中に他の歌が入っていたり、セリフのBGMが入っていたり、フィナーレで歌を歌っていたり、と10曲近くをノンストップで弾き続けることになります。

初めていらっしゃってから4ヶ月。御本人としても、何とかしてオペレッタを成功させたい、という思いも強く、毎日練習をしていらっしゃいます。

毎日少しずつの積み重ねですが、着実に上達しています。5曲はほぼ完成して、先の見通しも立ってきました。

少しずつの積み重ねが大きな結果になっていく、それは大人の場合も同じです。その労力が大きいだけに、レッスンを通して、その労力を効果的に使っていければ、実りもさらに大きくなっていきます。

止まらずに演奏する

幼稚園の先生のレッスンがありました。ずいぶん上手になってきました。前回のレッスンの時に、不安定だったテンポも、メトロノームを使って、速いテンポとゆっくりしたテンポの練習をくり返したことで、安定してきました。

次の課題は、止まらずに演奏できるようにすることです。今回は、歌の伴奏ですから、ピアノが間違っても、歌は進むことになるからです。

楽譜を見ながら確実に弾けるようにする

当たり前のことですが、やはり、第1段階として、確実に弾けること。

これは、指が動く、ということだけではなく、目で楽譜がしっかり追えて、今、ここを弾いているのだということが分かった状態になる、ということが重要です。

ピアノの経験の少ない大人の方を見ていると、意外に、音符は覚えてしまい、手を見ながら弾いている方が多いのです。

歌が進んでいるときに、次の「どこか」から合流するためには、今、楽譜のここの部分を弾いている、ということが確実に分かっている状態は欠かせません。

歌を覚える

「この歌のピアノ伴奏を弾く」「歌と合わせる」という時に、自分がその歌をうたえる、ということは重要です。

これについては、私も、前回の「フィガロの結婚」の伴奏の時に、痛感しました。レチタティーヴォという、おしゃべりをするように速く歌う部分を弾く時、最初はなかなか歌う方と合わないと思っていたのですが、自分がしっかり言葉を読み、歌の流れをつかむことができるようになったら、うまく合わせられるようになりました。

特に、今回のように子どもたちが歌う時。本番の前には練習もあります。そのことを考えても、歌を覚え、歌いながらピアノが弾けるようになることは理想です。

すぐにその段階まで行かなくても、まず、歌は歌として、覚えて歌えるようになれば、ピアノがつまづいたとしても、ここから入ろう、という判断がすぐにできるようになります。

最後に歌いながら弾く練習

ここまでできてから、歌いながら弾いていくと、ずいぶんスムーズに合わせられるようになります。

これも、歌う息は大変かもしれませんが、最初は「合わせられる速さでゆっくり」から始めていきましょう。

幼稚園の先生だけでなく、保育士、小学校の先生がピアノを弾きながら歌う時も同じですね。

授業・保育の場面で弾く全部の曲を、ここまで練習することは、現実的には難しいのですが、いくつかよく歌う歌、力を入れて指導したい歌を何曲かしっかり練習することで、ピアノや歌のスキルそのものが高まっていきます。

そうすれば、他の新しい曲に取り組む時にも、それまでよりもずっと楽にできるようになっていきます。

保育士さんや幼稚園の先生のピアノ―練習の段階

ピアノで両手が別々の動きをするようになると、初めは「弾きにくい」「大変」と思う場合が多いですね。

特に、大人になってからピアノを始めた方は、そう思う場合が多く、そこを乗り越えられるかどうか、というのは、とても重要です。

今回は、保育士さん、幼稚園の先生のように、大人の初心者の方がお仕事の場面でピアノを弾けるようになるために、ということを前提に書いていきます。

指遣いを決める

まず、片手ずつ弾く練習をするのですが、その前に、指遣いを決める、というのがとても大切です。

指遣いを決めて、いつもその指遣いで弾くことで、練習の内容が運動記憶に蓄積されていくようになります。

初心者の方の場合には、「できるだけポジションの移動を少なくする」「指をくぐたせる回数を減らす」指遣いを考えたほうが弾きやすいでしょう。

同時に、「練習の成果を蓄積して次に生かす」という観点から、例えば「ドミソは基本的に135」「ドファラは基本的に125」という大原則は頭に置いておく必要があります。

ただ、こちらは、前後の音によって変わってきます。そこが難しいところでもありますが、その原則が身についてくると、だんだん弾きやすくなってきますから、そこも欠かせません。

完成形をイメージする

今は、動画などがたくさんありますので、ぜひ、それを見たり聞いたりして完成形を頭に入れましょう。

楽譜を見ながら聞くことが大切です。というのも、同じ「おかえりのうた」でも、伴奏がいろいろあるのです。自分が弾くのと同じではない伴奏の動画を見ていても、「完成形をイメージする」ことにつながりません。

特に、左右の手が別々に動く部分がどこなのか、ということをしっかり聞き取っていきましょう。

片手ずつ、ゆっくりから

次に左右別々に、片手ずつゆっくり練習していきます。ここでは、拍子を数えながら、正確に練習していきます。

何回か練習すると弾きにくい部分が分かってきます。弾きにくい部分をできるだけ狭い範囲で特定して、どうしてなのか、考えます。

指遣いを変えたほうがいい場合もあるかもしれません。この場合は、弾きやすいように変えても良いのですが、変えた指遣いを必ず楽譜に書いておきましょう。

2つの音が離れていて弾くのが難しい場合には、その2つの音の練習だけをします。

先日の私の生徒さんの場合には、違う和音が続くところが難しいようでした。ゆっくりと1つ目から2つ目の和音に移る部分を練習し、次に2つ目から3つ目の和音に移る部分を練習し、それができてから、3つ連続という段階を踏みました。

ここの練習は時間がかかりますが、丁寧に行っていきます。

両手で合わせる練習

ここまでできてから、両手で合わせる練習に入ります。これも、最初はとてもゆっくりから始めます。特に、右手と左手が違うタイミングで弾く部分を意識して練習していきましょう。

それでも、うまくタイミングが取れない時には、ピアノではなくて、リズム打ちをして、タイミングだけ取る練習をします。

小さい子どもさんの場合には、リズム打ちの時に「両手、右、左、両手、両手」と口で言いながら、ゆっくり打つこともあります。

これは身体の多くの器官を使ったほうが、記憶に残りやすいという仕組みを使ったものです。手だけでなく、口も、声に出せば耳も使いますから。

できないときは、できるだけ小さく、分解して練習する。とても大切なことです。

弾けるテンポでだんだん速めていく

弾けるようになったら、テンポを上げていきます。この時、大切なことは「弾ける範囲でだんだん速めていく」ことです。

いつも同じ部分を間違えていたら、「間違える練習」をしていることになります。ですから、「弾けるテンポ」で「それを速めていく」という意識を持っていく必要があります。

お仕事で弾く場合、実際には、子どもたちの動きを見ながら弾くことになりますから、楽譜を見ながら弾けるように、手に覚えてもらうように練習していきましょう。

最初は時間がかかるかもしれませんが、くり返していくうちにできるようになります。

幼稚園・保育園でピアノを弾くときに

たうらピアノ教室には、幼稚園の先生や保育士を目指す学生さんもレッスンに来ています。現役の保育士さんや小学校の先生がレッスンに来ていたこともありました。

お仕事で、ピアノを弾く必要のある生徒さんの場合には、小さいお子さんのレッスンとは違って「実際に弾いている場面をしっかり考える」ということが大切です。

常に子どもたちを見ながら弾く

例えば、保育園でピアノを弾きながら子どもたちが歌を歌っている場面を想像してみましょう。

日常の中で、「おべんとうのうた」を弾きながら、子どもたちが歌うとしたら、これから食べるお弁当を前にして、食事が楽しく取れるようにしたいですね。ピアノを弾いて、その雰囲気作りをしていくことになります。

では、そのためには、どうしたら良いでしょうか。一つは、ピアノが自信を持って弾けていること。気持ちは音楽に表れますから、自信を持って弾いていると、それだけで場の雰囲気を作る大きな力になります。

同時に、子どもたちの様子を見ながら弾くことも欠かせません。子どもたちは、先生の視線を実によくとらえます。ここの部分については、実際に多くの中学生を見てきてその実感を持っているので、とてもよく分かります。

しっかりと様子を見ることで、トラブルを事前に回避したり、気になる子どもに先に声をかけたりすることができます。結果的に、それは、先生に対して子どもたちが心から信頼を寄せることにもつながります。

子どもたちを見ながら弾くために

では、子どもたちを見ながら弾くためには、どうしたら良いのでしょうか。

重要なのは、鍵盤の位置を「指や手で確実に覚える」ということです。一つ一つの曲を仕上げる時もそうですし、バイエルなどの練習曲を練習する時もそうです。

楽譜と手を見て、常にどちらかを見ている、という状態ではなく、ある程度、手の感覚で弾けるようになることがとても大切なのです。

「学校の課題だから…」「保育士の試験にあるから…」ではなくて、実際に現場で使えるようにするためには、この「子どもたちを見ながら弾けるようになりたい」という意識を持っているかどうか。

レッスンへや練習への姿勢がそれによって大きく変わりますし、結果的に進歩の度合いも変わってきます。

「どんな自分でありたいか」を考えていく

ピアノに限りませんが、「どんな自分でありたいか」を考えていくことは、とても大切なことです。

仕事でピアノを弾く大人の生徒さんだからこそ、そこはある意味、とてもはっきりと具体的です。

でも、「どんな自分でありたいかを考える」ことは、大人の生徒さんだけのことではなく、子どもさんも同じですね。そして、どれくらい具体的に、はっきりとイメージすることができるか、これがも結果に大きく影響することも同じです。

新しい年度を迎えて、お子さんはお子さんなりに、大人は大人なりに、そのあたりを改めて考えるには良い機会ではないでしょうか。

私自身も、明日の本番を節目に、また次の自分のあり方をしっかりと考えていこうと思っています。