奏法・響き

2019.07.23

耳の横を意識する

昨日は、自分のレッスンに行ってきました。今回も、新しい発見がありました。自分の感覚をレッスンの度に更新していくことになります。

腕の下側を意識しつつ、鍵盤の浅いところを狙う

前回のレッスンで虫様筋に力をいれること、そして鍵盤の底よりもほんの少しだけ浅いところを狙うことを教えていただき、2週間、練習していました。

私の場合、虫様筋に力を入れようという意識を強く持つと、手首が固くなっていることがこの2週間の練習の中で分かってきました。虫様筋への意識と同時に腕の下側を相当しっかり持ち上げる意識を持つことが大切なのです。

鍵盤の深さについては、「このあたり?」「まだ深いかもしれない」という感じを持ちつつ、レッスンへ。

先生のピアノで弾いても、最初は「ここかな?」「深い?」と探る感じでした。聴いていただくと、「紙1枚分、深い。」とのこと。微妙です。

手前から奥に向けて指を入れていたのを、真上から真下へ入れるような感じで手を使ってみました。今度は、音に広がりが出てきたので、ポイントをつかめたようです。

耳の横に意識を持っていく

「耳の横、この辺に意識を持って、弾いてみると、音楽が変わってくるんですよ。」と先生に言われ、耳の横に軸があるようなイメージを持って弾いてみました。

まず、座って弾き始める段階で、今までと姿勢が変わることに気づきました。

今まで、自分の中で響きを追う時に、目の前からピアノの奥に向かって上がっている響きを追う、という意識で弾いていました。

耳の横を意識することで、より広い範囲にある響きに意識が向きました。自分自身の横、もう少し後ろまでとらえようという感覚になります。

確かに、自分自身がどこに音を、響きを伝えようとしているのか、というのは音楽を聴く人に届ける上で重要なことです。

より立体的に、より広い範囲に意識を持っていくことができました。「音楽が変わる」ということとつながっている気がします。

音をとらえる感覚を成長させていく

耳で響きをとらえられるようになると、響きの質、音の質が変わっていきます。身体の使い方も、自分の耳で確認しつつ、調整していくことができます。

今回、また一つ、音をとらえる時の感覚を変えることができました。成長、と言ってもいいでしょう。

一つずつ、自分自身の中にあるものを磨き、成長させていくことで、さらに良い響き、良い音楽を目指していくことができます。

いくつになってもそれができること、そのものを楽しみつつ、また、今週も練習していきます。

鍵盤の上の空間を使う

ロシアピアニズムの奏法のレッスンに、遠方からいらっしゃっている生徒さんがいます。

「耳で響きをとらえる」という感覚が身につき、ピアノの響きそのものも大きく変わってきました。

まとまりを意識して手を動かしていく

ショパンのノクターンのレッスンをしていて、全体としての響きがずいぶん美しくなったと思いつつも、気になる部分がありました。

オクターブや、それ以上の音程の跳躍部分です。ドからドへうごく、その2つ目の高いドの音が、押さえ込まれた感じの響きの少ない音になっていました。

手の使い方を見ていると、小指の付け根の部分が使えていません。そのために、響きの薄い音になっていたのです。

逆に、小指の付け根を使えるように手を動かすにはどうしたらよいか、と考えていくと、その前の低いドの時の親指の使い方で高さを出すこと、そしてその親指を起点に上から子指を入れていくような感覚で弾いていくことが重要であることが分かりました。

響きの薄い音があったときには、その前の音を出す時の指の使い方に気をつけていく必要があることは多いです。

まとまりを意識して、手を使っていくことで、ポジションを一定に保ち、美しい響きを保ちやすくなります。

鍵盤の上の空間を使う

もっと大きな跳躍音程の部分の場合はどうしているのでしょう。曲の中には13度の跳躍もあります。

そういう時の弾き方、「こんな感じで」と私が弾いてみると、「鍵盤の上の空間を使っているんですね。」生徒さん。

確かにそうです。鍵盤の上の空間を使っています。そのことで、真上から子指を使って打鍵することができるようになります。

ロシアピアニズムの奏法の場合、移動も単純に最短経路を平行に移動するのでなくて、鍵盤の奥行きも使うし上も使っています。

立体的なイメージで鍵盤と対することで、響きも立体的になっていきますし、同時に音楽も奥行き、広がりができていきます。

響きで音楽を作ることの楽しさ

家で練習をしていたら、生徒さん本人よりも、ピアノ経験の長いご家族の方から「音が変わった」と言われたそうです。

どうしたらより良い響きで演奏することができるか?ということを常に考えているからこそ、音のとらえ方も変わってきます。

その積み重ねの中で、耳も響きを聴き分けられるようになっていくし、手や身体の使い方も変わっていきます。

その結果として、音楽の感じ方そのものも大きく変化していきます。それが、とても楽しいのです。

生徒さんの演奏を聞きながら、奏法の持つ魅力を改めて感じました。

2019.07.11

虫様筋も他の部分も意識する

火曜日、自分のレッスンに行ってきました。今回はメソッドの先生もいらっしゃる日だったので、いつもとまた違う視点でのご指導もしていただくことができました。

虫様筋を意識することについて、先生もブログに書かれていらっしゃいましたが、それを実際にレッスンしていただきました。

虫様筋でしっかり支える

「虫様筋を意識する」とともに、鍵盤の狙う位置が重要なポイントであること。今まで私が捉えていた部分よりも、もう少し浅い位置を狙うこと。一瞬もたれる、でもすぐ力を抜くこと。

1音ずつ出してみて、響きを聴いていきます。「この音は深いところを弾いている」「今度はもたれていない」など、何回も探っていきます。

途中で、メソッドの先生が見本を見せてくれたり、大野先生が弾いてくださったり。

少しずつですが、感覚がつかめてきました。ただ、一方で「虫様筋を意識して、力がしっかり入った状態、支えている状態」だけに意識が集中しがちになります。

今度は腕がうまく使えていなかったり、手首を下から持ち上げて支える意識よりも、上から引っ張り上げる意識のほうが強くなりがちです。

常に腕の付け根からひじ、手首の下への意識も持つこと。他の指に余分な力が入らないこと。すべてが関連してようやく、弾いている「その1音」の響きがふくらんできます。

まとまりを意識しながらゆっくり練習する

次に、今回練習していったフランス組曲のアルマンドでその響きを作っていくレッスンをしていただきました。

その時に、鍵盤を押し下げる時の意識とともに、離す時にももう少し意識を持ったほうが良いこと。

つい、「次の音を弾く」ほうに気持ちが向きがちですが、離鍵を丁寧にすることで、音楽がより美しくなっていきます。

同時に、ゆっくり練習するときには、つい1音1音でとらえがちなのですが、まとまりを意識して、その時の手の使い方をあらかじめ考えながら弾いていくことについても、指摘していただきました。

それをすることで、テンポをあげていったときにもスムーズに対応できるようになるのです。

浅いところをねらう

自宅でも、実際に曲をゆっくり弾きながら、「腕から手まで」「虫様筋」「浅いところ」「鍵盤を離す時」「まとまりとしての手の動き」を意識しながら練習を始めました。

一度にやることがたくさん!でも、毎日続けていくことで、少しずつ響きをより豊かにしていくことができます。

ガブリーロフの演奏でも、さまざまな音色、さまざまな表現ができることのすばらしさに感動しました。

少しでも、あの音のイメージに近づけるように…と目標を高く持ち(目標そのものはどこに置くか、自由ですから)練習していきます。

2019.07.08

楽器が教えてくれる

先生がブログに虫様筋のことを書かれていました。

https://ameblo.jp/chipmop1021/page-2.html

なるほど、と思いながらピアノに向かっているここ数日です。

虫様筋を意識する

先生はよく「楽器が教えてくれる」と言います。確かにピアノをスタインウェイにしてから、それをより実感できるようになりましたし、同時に自分の感覚に対しても以前よりも敏感になった気がします。

タッチ、身体や手の使い方、ポジションの等、ほんの少しの違いにピアノが敏感に反応してくれるので、こちらもそれをキャッチして敏感にならざるをえないのです。

虫様筋を意識して、弾いてみると確かに響き方が変わってきました。ただ、私の場合、以前よりはだいぶ筋力がついてきたとはいえ、まだまだ弱いのも確かです。

これは一朝一夕にはいかないので、さらに指の筋トレや毎日の練習を通して筋力をつけていくしかありません。

ピアノに聞きながら修正していく

同時に、気をつけるポイントがたくさんあるので、 なかなか「全部に気が回っていない」状態が起こりがちなのも確かです。

姿勢、肩甲骨、脇から手首までの下側への意識。ポジションは高く、しかも手首の下側の筋肉で支えるイメージで上げる。上から引っ張るようなイメージで上げると、響き方がまた違ってしまいます。

肩・肘・手首は力が鍵盤まで伝わるように。虫様筋を意識する。

1音鳴らすだけだったら良いのですが、そうではないので、音から音への移動の時には、腕から手首の旋回も使っていきます。

こうやって書いていくだえけでも、確かにたくさんの動きを一度に意識しつつ弾いてているんだな、と改めて思いますね。

ピアノが教えてくれることで、「何か違う?」「どこが違うんだろう?」と考えるきっかけになります。

音が上がっていない→ポジションが下がっているかな?
響きが薄い→虫様筋?底を触っている時間が長すぎて響きを抑えている?

「何か違う」と感じることで、一つ一つの要素を振り返ることができます。

生徒さんも楽器と対話できるように

私だけではありません。レッスンにいらっしゃる生徒さんも楽器と対話できるように、と願っています。

ロシアピアニズムの奏法を学びにいらっしゃってくださる方はもちろんのことですが、レッスン時には常にピアノのふたを全開にして、空間の響きを聴こうね、と機会あるごとに幼稚園や小学校低学年の生徒さんにも言っています。

自分の出した音をしっかり聴くことが楽器との対話の第1歩だと思うからです。

せっかくの恵まれた環境、最良の楽器を生かして、自分の勉強も、レッスンもより良いものを求めていきます。

2019.07.01

アンドレイ・ガヴリロフリサイタル

昨日は、横浜までアンドレイ・ガヴリロフのリサイタルを聴きに行ってきました。

実は、なかなか言葉が出てきません。

どうしてだろう、とずっと考えていました。そして、ようやく、言葉ではない部分、言葉にならない部分で受け取ったものが多すぎて、言葉が出てこないのだということに、気が付きました。

一つ一つ、「批評する」ように書くことも、時には必要かもしれません。でも、あの演奏を聴いて、分析して批評的にあれこれ書くことに何の意味があるのだろう?と思いました。

ただただ「すばらしいものを聴いた!」という感動だけです。

どれほどの音色があるのだろう?ほんとうにさまざまな音が聴こえてくる。語りかけてくるような音、悲しげな音、楽しそうな音。1音ずつがほんとうに生きて意味を持っている、という感じ。

フォルテの時には、聴こえてくるだけではなく、響きが直接伝わってくる感じ。

音楽が一つの宇宙として、無限の広がりをもって感じられる、あの響きを直接聴くことができて、ほんとうに幸せでした。

あまりにすばらしくて、会場を立ち去り難く、並んでプログラムにサインしていただき、握手もしていただきました。

とても大きくて厚い手。この手からあの素晴らしい響きが出てくるのだと、また感心。

このプログラムは宝物です。

最後に、大阪のホールのチケット販売ページに掲載されてた御本人の文章の一部をご紹介します。

  音楽に対する私の新たなアプローチは、直観的経験の積み重ねでアマチュア的になされてきた解釈方法を、 科学的レベルまで発展させるものです。
 科学的な研究により楽譜の奥に潜む作曲者の相貌にせまります。
  つまり、作曲家の心理や動機を社会的、文化的、知的側面から真摯に解剖していくのです。
  哲学、人類学、心理学、音楽心理分析、絵画、文学、詩など、 あらゆる人文科学を統合して広く深く学び知ることにより、唯一無二な真の音楽芸術の理解に到達することができるのです。

こうして音楽の中にある作品内容が隅々まで明瞭になった時、作曲家の意図に合致した音楽性を伴う新たな演奏レベルが生まれます。音楽が、一音一音聴衆に語りかけ始めるのです。
  音楽自らが、自分の中に作曲家が何を置いていったのかの全てを話してくれて、音楽が生きたものとなるのです。このような演奏は音楽芸術が新しい意義を持つことを示し、深く理解することの大きな喜びをもたらし、世界中の文化水準を上げることでしょう。

 私の現在の課題は、広く多くの方々に、音楽言語を認識し表現するこの新たなメソッドをお伝えすることです。
 日本は、私がこのメソッドを聴衆に披露する最初の国の一つです。
 聴衆の皆様に是非、シューマンやムソルグスキーの思考を私の演奏を通して理解し辿っていただきたいです。音楽芸術への理解の新たなステージが開かれ、聴衆の皆様にも届くものと信じています。

http://www.kojimacm.com/digest/190704/190704.html

2019.06.18

ポジションを安定させる

昨日は、レッスンを受けに都内まで行ってきました。フランス組曲第1番、全曲を聴いていただきました。

練習方法を変える

前回のレッスンで楽譜をはさんで弾く方法を教えていただきました。これをすることで、腕の付け根から手首まで、小指側のラインが意識できるようになります。

楽譜を落とさないようにすることで、ポジション全体が上がった状態を保てるようになります。

私の場合には、速いテンポの曲になると、どうしてもポジションが下がりがちで、同時に響きも上がりにくくなっていました。

先週のレッスンでも、クーラントになると、楽譜が厚くて重かったこともありますが、はさんでいるはずがどんどん下がってずれてしまい、とても弾きにくく感じていました。

1週間自宅で練習し、自宅のピアノでは、ずいぶん響きが上がった状態を安定して保てるようになったと感じていました。

先生のレッスン室のフルコンを使って、そのポジション、その弾き方が身についたかどうか、先生の耳で客観的に聴いていただきました。

「今日は、全然押し付けていないですね。」と言っていただきました。先生のピアノでも響きが上がっている感じがしていたので、大丈夫とは思っていま。たが、 ホッとしました。

曲の魅力を信じる

もう一点、ずっと練習していて、クーラントの後半の表現がしっくりこないということをお話ししました。

あれこれ考えてみても、いろいろ自分なりにやってみても、何だか平坦な気がしてしまうのです。

「そういう時はあります。そういう時は、『何もしない』というのも1つの選択肢なんですよ。」と教えていただきました。

「曲の魅力を信じるんですね。自分があれこれ何かするのではなくて。」「時間が経つことで、感じ方もかわってきますから。」

驚きましたが、納得もしました。確かに、時間が経つことで感じ方は変わってきます。バッハの音楽は常に魅力的です。

「自分が」を考えることは重要ですが、時にはそれを手放すことも大切なのかもしれません。これもとても考えさせられました。

ピアノを弾けることの幸せ

ピアノを弾けることの幸せの1つは、作曲者とつながる感覚を持てることだと奏法を変えてから、特に感じるようになりました。

バッハとも、モーツァルトとも、何百年も隔たっているのに、直接つながる感覚になれる。

「曲の魅力を信じる」ということは、作曲者とのつながりを信じる、ということなのかもしれません。また次もバッハ。つながりを感じながら練習していきます。

2019.04.15

身体の使い方を意識し直す

葵の会定期演奏会前は、どうしても、本番で演奏する曲目を中心に練習しがちでした。

姿勢は意識していたつもりではありましたが、速いテンポでトレモロをたくさん弾いていたので、全体に手のポジションは下がり気味だったようです。

演奏会も終了したので、昨日から改めて、身体の使い方を意識し直しながらバッハを練習しています。

姿勢をチェックし直す

座るところから始めて、お腹の支え・肩甲骨、大胸筋、前腕の支え、手首、虫様筋と一つずつ確認をしていきました。タッチの変化も意識しながら、ゆっくり弾いていきます。

腕・手の使い方や手首の位置のイメージの持ち方。肩甲骨から手までの意識の仕方…と考えながら弾いていると、肩に力が入っていてやり直し、今度は親指が下がっていた気がして、もう一度やり直し。

いわゆる「難しい曲」ではないのですが、ていねいに考えていると、きりがないような気がしてきました

考えすぎていても、音楽がすすまないのですが、今回は、身体全体の感覚のチェックが目的なので、しっかり考えることにしました。

音色のチェック

速い曲を弾いていると、どうしても音色の変化までは意識がいきません。今回のモーツァルトはとにかく必要なテンポ感を出していくことに重点をおいていましたので、よけいです。

ゆっくりした曲の音色の確認もしていきました。ほんの一週間くらいなのですが、やはり、感覚がずれてしまったと自分でも自覚しました。

音色の変化ということに対する、自分の耳の繊細さが変わってしまったという感覚でしょうか。

一音ずつ、タッチを確認しながら、同時にそのタッチによって上がってくる響きをもう一度頭の中に入れ直す感じです。

ていねいに、ていねいに。姿勢・指の使い方を確認しながら耳をすまして自分の音を聴いていきます。

自分の行きたい方向を自分で目指す

私自身の演奏の方向性、私自身の行きたい方向をしかり見定め、そこに向かって練習していく。

結局、いちばん大切なのはその部分です。曲のイメージに合った多彩な音色で演奏すること。響きを使って、彩りのある音楽を作っていくこと。その方向を目指していきたいのです。

今の師匠に指示してまる7年。今年は8年目になります。ようやく、自分なりに「意識する」ことはできるようになってきましたが、先はきりがありません。

ていねいに、自分の行きたい方向を向いて、練習していきます。

2019.04.11

手の支えを意識する

先日のリハーサルで、現在は同じ門下にいる先輩と休憩時間に奏法についての話をしました。

手の支えを作ることで下部雑音をなくす

その方は、今年はスクリャービンの前奏曲を演奏します。音が上に上がりとても美しいスクリャービンでした。

「ほんとうに浅いところをねらうように言われているのだけれど、それが難しくて、つい深くなってしまう。『下部雑音』が出てしまうのよ。」

下部雑音というのは、ピアノの鍵盤が一番下に下がった時にする音。いわゆる「しっかり弾く」時にカタカタという感じの音が鳴るのですが、その音のことです。

スクリャービンは響きを混ぜることで、美しい音楽になります。そのためにはほんとうに浅いところ、音は鳴るけれども、鍵盤が下がりきったときの音は出さない、そこをねらって弾く必要があります。

「結局、手の支えなのよね。」という話になりましたが、ほんとうにそうなのです。手の支えをしっかり作ることでコントロールしていくことになります。

手の支えを意識して速い部分を弾く

今回、私は「フィガロの結婚の序曲」を弾くのですが、これがものすごくテンポが速いのです。その中で、支えをつくることの重要性を特に実感したのは、同音連打の部分です。

鍵盤の浮力を使って連打していきたいので、あらかじめしっかり支えを手の中に作り、支えの部分にだけ力を入れて、指先の力を抜いて弾いていきます。

うまく支えが作れた時は、テンポ通り弾けるのですが、鍵盤の戻りが間に合わなず、連弾の音が一つにくっついて聴こえてしまう時は、支えが不十分な時。これは、歴然としています。

同時に、後半に出てくる音階の下降形。この部分を弾く時もそうです。一つ一つの鍵盤を下まで鳴らしていては絶対にテンポに間に合いません。

練習の時は、とてもゆっくり一音ずつ、1本ずつの指に、力をかけて弾いていきますが、実際のテンポで弾くときには、鍵盤の底まで指を下げることはせず、浅いところをねらって、一気に下降していきます。

それでも、一般的にオーケストラで演奏されるテンポよりは遅くなってしまうのですが、このロシア・ピアニズムの奏法でなければ、今弾いているテンポでも、「フィガロの結婚」の序曲を弾くことはできなかっただろうと思います。

日常の練習の中で支えを強化していく

結局、日々の練習、筋トレをしていく中で、支えを強化し、できることを一つずつ地道に増やしていく、それしかありません。

確かに、私自身も最初に比べれば、支えができてきたことで、オクターブもずいぶん弾きやすくなりましたし、鍵盤の上のほうをねらって弾く音階も、ある程度弾けるようになってきました。

私の先生も、話をしていても常に指は動いて支えを作る時の筋トレをしています。やはり「弾ける手をつくる」これが重要なのです。

本番まであと2日。今ある力を最大限発揮できるように練習していきます。

2019.04.02

意識することと響き

昨日は先生のところにレッスンに行ってきました。セミナーも終わり、ようやく日常を取り戻すことができたとほっとしていらっしゃいました。本の出版以降、雑誌の取材やセミナーの準備などでとても慌ただしい日々だったのだそうです。

昨日のレッスンでも、いろいろ気づいたことがあり、とても学ぶところの多い時間になりました。

タッチを変えることを意識しつつもとらわれすぎない

昨日もフランス組曲です。タッチを変えながら弾くことを意識し始めるときりがありません。

家での練習の時も、いろいろなタッチを使って試行錯誤しながら、ここはこうしようか、ここはこっちのタッチのほうが良いかもしれない、など考えながら弾いていました。

昨日のレッスンでも、最初は一つずつのタッチのことを意識できる、ゆっくりしたテンポでアルマンドを弾きました。

その後、「少しテンポを上げてみましょう。」ということで、本来のテンポで弾いてみました。

2回、テンポを変えて弾いてみたことで、私自身が一つ一つのタッチを変えることにとらわれすぎていたことが分かりました。

ある程度の設計図を考え、音のイメージを作り、タッチを意識した練習をした上で、次の段階は音のイメージだけを頭の中に持って、一つ一つのタッチにとらわれずに流れを意識して弾いていく。

考えてみれば当たり前のことです。そうしなければ、いつまでたっても曲の持つ本来のテンポでは弾けません。

逆に、速いテンポの中でも瞬時にタッチを変えていけるくらい、手の内側の筋肉の力を強くしていくこと、 聴く力を磨いていくこと。結局、一番基本的なその部分に行き着くのです。

手の支えの意識を変えると響きが変わる

アルマンドに続くクーラントは速いテンポの曲です。こちらを速くしようとすると、何か平坦な気がしていました。

聴いていただくと、「平坦ではありませんよ。基本のタッチができているので、立体的に聴こえます。」と言っていただけて、ちょっとほっとしました。

ただ、何か自分の中でもの足りない感じがします。すると、先生が、 「少し引き上げてみたほうが良いかもしれない。」と言いながら 弾いてくださいました。

響き方が違います。「ここの左手がもう少し出ても良いかもしれませんね。」と言いながら、何小節か聴いたあと、もう一度弾いてみました。

先生の音の響きをイメージしながら、手の内側の筋肉を使って引き上げる感覚を意識して弾いてみると、やはり、さっきとはずいぶん響き方が変わりました。

引き上げながら下げる感覚

「指を鍵盤に下げて弾かなければ音は出ません。下げつつ引き上げるという相反する2つを同時にするのですから、これは実際にやってみないと分かりませんよね。」と先生も言っていましたが、本当にそのとおりです。

そのとおりです。「引き上げる」が実感できるようになるためには、手の内側の筋肉にある程度の力がついてくることが必要です。

手が空いてさえいればできる指の筋トレを地道にしていくこと。耳で聴く力を伸ばしていくこと。

当たり前のことであり、一朝一夕にはできないことですが、それを積み上げていった先に美しい響きがある、ということを改めて実感したレッスンでした。

2019.03.24

「『響き』に革命を起こす ロシアピアニズム」出版記念セミナーに行ってきました

私のピアノの師匠、大野眞嗣先生の出版記念セミナーに行ってきました。本が出版されて2ヶ月。増刷を重ね、楽器店の書籍コーナーには平積みされています。

それだけ、「響き」で音楽を作っていくピアニズムが注目されているということでしょう。

響きで音楽を作る

前半は、大野先生と川村文雄先生との対談でした。

響きで音楽を作っていく最大の特長として、「どの楽器の奏者も声楽のように歌わせる」「もっと人の声のように、血の通っているように弾いてほしい」という部分に尽きるのではないかと改めて思いました。

ベルカント唱法も話題になりましたが、大きな声で歌うのではなく、小さくてもホールの隅々まで響く音。

フレーニの歌声が頭の中に浮かんできます。ピアノであの歌声、特にピアニッシモの響きが再現できたら、それはなんと素晴らしいことでしょう。目指していくべきはそこにあります。

川村先生のお話の中からは、「倍音をコントロールしていく」という言葉が印象に残りました。

確かに、今、私にとっての最大の課題である、音色の弾き分け。まさにこの部分であると思います。いかに倍音を生み出し、コントロールし、響きを調和させていくか。

より音楽を感じ、より美しいものを自分自身で発見していく。そのために、響きをコントロールしていく感覚をもっと強く持っていきたい、そんな思いになりました。

25のタッチ

後半の公開レッスンでは、甲賀先生が姿勢の基本を確認し、25のタッチの弾き分けを説明なさいました。

改めて姿勢・軸・肩甲骨から腕の意識など、整理していただいて、確認することができました。

タッチは、前回の私のレッスン時よりも増えていました。ブログで25に増えていたことを知っていたのですが、ひとつずつ解説していただけたのは、ありがたく思いました。

それぞれのタッチについて、大野先生ご自身から、「アルゲリッチが16分音符を弾く時に多用しているタッチ」とか「ガブリーロフがよく使うタッチ」「ホロヴィッツがこういう場合に使っているタッチ」などの補足説明もあり、音楽の中でどう使っていったらよいかのイメージが持ちやすいご説明でした。

モーツアルトのピアノ・ソナタ大4番。冒頭の1フレーズ、右手部分だけでも、一音ずつタッチを変え、音楽を作っていく、その実例を見せていただくことができました。

大野先生の演奏も聞くことができて、その豊かな響き、多彩な音色は心に直接伝わってくる感じがしました。

音楽の中にどう生かしていくか

結局、大切なことは、そのタッチを、響きを演奏者がどう生かしていくか、追求していくことにあると、自分自身を振り返る機会になりました。

一音ずつ、タッチを変え、響きを変え、音楽を作っていくこと。つい流れの中で、安易に弾いてしまいがちな「一音」の性格を自分なりにどうとらえていくか、楽譜とピアノと向き合っていくこと。

大野先生との出会いからまる7年。新たな節目に、またたくさんの課題を教えていただくことができた、そんな深く、有意義な時間となりました。