「2017年 9月」の記事一覧

2017.09.15

ベートーベンのピアノソナタを聴いて

こんにちは。たうらピアノ教室の田浦雅子です。

私は今現在、ピアノ教室の仕事だけではなく、パートで違う仕事もしています。

その仕事先、コーヒー豆販売兼喫茶店では、毎日、店長が音楽をかけるのですが、今日はフリードリヒ・グルダ(Friedrich Gulda, 1930年5月16日~2000年1月27日・オーストリアのピアニスト・作曲家)の演奏するベートーベン・ソナタ全集でした。

朝から「今日はピアノだ。ベートーベンだ。」とそこまではすぐ分かったのですが、「このピアノは今の楽器なのかな?まさかフォルテピアノではないし。」と思うくらい、音色が均一でした。曲の構造、構成というものは非常によく分かる、素晴らしい、さすが、という演奏だと思います。

ただ、今私が学んでいるロシアの奏法、響きで音楽を作っていく奏法とは、音楽そのもののとらえ方が大分違う、ということは、改めて感じました。

今の私の奏法だと、より、その場その場での変化が大きいと思います。どんな音色のイメージを頭に描いて一音を弾くか。ペダルはどうするか。それを、その演奏のまさに「その」時に自分で選んでいきます。

私が仕事先にいる間は、初期と中期までの曲だったので、今までに弾いたことのある曲が何曲もありました。

何だか大学時代の恩師の声が聞こえてくるようで、いろいろ思い出されました。
「そう言えば、大学1年生の時に最初の8小節だけで、レッスンが終わってしまったことがあった。」とか、
「このテンポの設定、速すぎて一蹴されてしまったっけ。若くて、間が持たなかったのかなあ」などなど、懐かしく思いました。

昨日も少し、ピアノと脳の関係について触れましたが、「ピアニストの脳を科学する」という本によると、

ピアニストがピアノの音を聴いているときには、音を聴くための神経細胞だけでなく、なんと指を動かすために働く脳部位の神経細胞も同時に活動していることがわかりました。(中略)ピアニストの場合、指を一切動かしていないにもかかわらず、ただピアノの音を聴くだけで、指を動かすための神経細胞が活動したのです。

とあります。

この本は、以前読んでいたのですが、今日、グルダの演奏を聴きながら、「ここは、こう手を動かすイメージで弾きたい!」とか、「ここを弾くときには指をこう使ってみたら良いかな。」とか、ピアニストの方たちの練習量にはほど遠い私でも、手の動きが頭の中にイメージされて、「あ、なるほど。」と実感しました。

ベートーベンのソナタの作品の持つ力にも触れられましたし、何だか、幸せな1日でした。

2017.09.15

ピアノを習うことと脳の発達

こんにちは。たうらピアノ教室の田浦雅子です。

最近の脳科学の進歩はすばらしく、NHKスペシャルのアーカイブで脳をテーマにした番組を見ていると、こんなことまでわかるのか、と驚くばかりです。

そんな脳科学を研究している脳科学者が、お子さんの習い事として薦めるのがピアノ。

3年ほど前に、テレビ番組で放送された

「脳科学者11人に聞いた(複数回答あり)脳の発達に効く!
12歳までに通わせるべき習い事ランキング」では

1位 ピアノ 同時処理能力UP

ということで、11人の脳科学者全員が、脳の発達にピアノが有効、と言っていたそうです。

確かにピアノは、右手と左手を同時に使います。しかも、別々の動きをします。
さらに意外に足もたくさん使っています。
右足でも左足でもペダルを踏みますが、これもまた、左右が違う動きをします。

例えば、左足はペダルを下まで踏んで、右足は半分くらい浮かせてそこから徐々に右足だけペダルを上げていくこともあります。逆に、左足を次第に上げていくこともあります。こう考えると確かにすべてが全く違う動きをしています。

この、両手両足がそれぞれ違う動きをすることで、人間の脳の「前頭前野」という部分を発達させるのだそうです。

脳科学辞典によると

前頭前野はヒトをヒトたらしめ,思考や創造性を担う脳の最高中枢であると考えられている。

とのことで、人間らしい思考や創造性を司る部分がピアノによって、より発達するというのは、ピアノを愛する者としてはとてもうれしいことです。

もちろん、脳の発達に「役立つ」から、というだけではなく、美しいものにたくさん触れる体験は子供さんの心にとって、どれほど大切なことでしょう。

特に小さいお子さんの成長は、本当に速いので、小さい頃から音楽に触れていくことで、自然に芸術に親しんでいく基礎が築かれていくと思います。

脳とは関係ありませんが、ペダルを踏むのに足を使うということに関連して思い出したことがあります。以前足裏マッサージを受けたときに、「足の裏の厚みが普通の方とずいぶん違うのですが、どうしてでしょうね。」と言われたことがあります。

ピアノのペダルを踏むことで、足の裏の筋肉の付き方も変わってくるのかもしれませんね。

 

2017.09.13

ピアノ体験レッスンとご入会

昨日、体験レッスンにおみえになり、そのままご入会いただけました。

六十代の女性の方で、合唱をなさっていらっしゃるそうです。
ご自宅にピアノもお持ちになっているとのこと。

まず、お話をうかがってから、実際にピアノの前に座っていただきました。
椅子の座り方、鍵盤への手の置き方、ボールを使って手の形と音の引き出し方、ゴムを使っての脱力の仕方などを体験していただきました。

脱力の感覚をつかむのが難しい方が多いのですが、歌を長く歌っていらっしゃるだけあって
「今は力が入っていますね。」
とおわかりになります。

手に一度力を入れて、それから力を抜くと分かるかもしれません、と言いますと、
「歌の時もそうですね、肩を上げてから下げますもの。」
と今までの経験と比較してすぐご理解いただけました。

また、音色についても
「今のはとがっていますね。」
とすぐ違いを聞き分けていらっしゃいました。

大人の方の場合は、このように今までの経験と結び付けることが、新しいことを学ぶときの助けになります。これはお子さんとの大きな違いで、大人ならではの強みと言えます。

楽譜を読むことはすぐおできになりますので、「ロシア奏法によるピアノ教本・はじめの一歩」の最初の2曲「リス」と「ラードゥシキ」をそれぞれ右手と左手で弾いていただきました。

「リス」の曲も、伴奏部分を私が弾きますと、「この挿絵のイメージですね。」とおっしゃっていました。

その後、ソルフェージュです。「やさしいソルフェージュ」の本を使って、リズム打ちと視唱をしました。リズム打ちは4分の4拍子で、四分音符と四分休符ですので、やすやすと、視唱もハ長調ですので、だいたいは1度で、少し音程が取りにくかったものも2度目には正確に歌うことができました。

個人レッスンの良さは、その方に合わせてオーダーメイドでレッスンを組んでいくことができるところにあります。

ぜひお気軽に体験レッスンにお申し込み下さい。LINEからのお申し込みも受け付けております。

 

2017.09.11

50年以上演奏し続けるということ

昨日は、私の所属する葵の会の例会でした。

葵の会は、埼玉大学教育学部で音楽を学んだ同窓生の演奏団体です。
来年で54回目の定期演奏会を迎える、県内でも最も古い団体の1つだそうです。

現在も創立時のメンバーを含め、歌・ピアノ・作品発表でプログラムを組み、毎年4月に定期演奏会を行っています。

何より私がすごいと思うのは、54年間のすべての定期演奏会で演奏している先輩を始め、50回以上出演の方が何人もいらっしゃるということです。教員として仕事をしていた方が多く、その期間も含めて半世紀以上にわたって、ずっと自分の音楽を作り続けてきたことに尊敬の念を持っています。

「定期演奏会で歌うと、自分の演奏の不十分さがわかるの。だから来年は今年より少しでも上手になりたいなあ、と思って続けているうちに50年たってしまったのよね。」とある方はおっしゃっていました。

「とうとう後期高齢者になってしまった!」と言いながら、今年も4人8手連弾にチャレンジする方がいらっしゃいます。

この先輩方と会って、お話を伺うことで、私はとてもたくさんのパワーをいただきます。皆さん本当に前向きで、向上心にあふれています。私自身、その方々とともに演奏できるということ、自分で音楽を作っていけるということの幸せを感じます。

昨日は次回、来年4月に向けての曲目をエントリーしてきました。私はモーツァルトを弾きます。これから4月まで、モーツァルトとしっかり向き合って、今より少しでもいい音で弾けるよう、少しでもモーツァルトの音楽の本質に近づけるように弾いていきます。

 

 

2017.09.10

看板と庭の草取りとピアノの練習

こんにちは。たうらピアノ教室の田浦雅子です。

昨夜、ピアノ教室の看板が届きました。Mサイズをお願いしたのですが、一目見て「大きい!」という感じました。室内なので大きく感じられるのかもしれません。

でも、オレンジ色がかわいくて、音符もカラフルで、とても気に入っています。ちょっとドキドキしつつも、「この看板にふさわしいレッスンをしよう。」と気がひきしまりました。もし、お近くを通る方がいらっしゃったら、見ていただけるとうれしく思います。

さて、今日になって、教室南側道路に面したフェンスの、どの位置に設置しようかな、と見ていました。その時、ふと視線が自分の足下に行き、ブロック塀と道路の間が草だらけだということに気づいたのでした。

いくら気に入った看板でも、下がこの草では、看板がかわいそう。さっそく草取りをしました。ブロック塀の縁がきれいになった後、先日から気になっていた庭の草取りもしました。

実は、この行動の仕方がピアノの練習と関係があるのです。

「庭の草取りをしなくては。」と思っていても、なかなか取りかかれませんでした。ブロック塀の縁の草取りをすると、その勢いで庭の草取りもさっと取りかかれました。

ピアノの練習も同じです。「やる気」になるのを待っていては実際にはなかなか行動に移せません。まずはとりあえず、ピアノの前に座る、楽譜を開いてみる、などピアノに関わる何か「行動」をし始めると、すっとピアノの練習に取りかかれます。

これは、ピアノだけでなく、家庭学習も同じです。何か始めてみる、教科書を開いてみると、学習に取りかかれます。

さらに、決まった時間に毎日繰り返していくと、習慣として定着していきます。

ということで、せっかく看板もきたことですし、私も庭と看板下の草取りを習慣として定着させていきます。

2017.09.08

ピアノとソルフェージュ

こんにちは。たうらピアノ教室の田浦雅子です。

ソルフェージュとは音楽の基礎力です。

ソルフェージュ(フランス語: solfège)とは西洋音楽の学習において楽譜を読むことを中心とした基礎訓練のことである。

ソルフェージュは楽譜を中心とした音楽理論を実際の音に結びつける訓練を指す。これらの訓練を通じて得られる能力、特に読譜能力はソルフェージュ能力と呼ばれる。                     

ソルフェージュ Wikipediaより

音を聴き取ったり、楽譜を見て歌ったり、リズム打ちをしたりして、その力を養っていきます。このソルフェージュの力を伸ばすことは、ピアノを初めとした楽器の演奏を楽しむために、とても大切だと考えています。

まだ中学校の教師をしていた頃のことですが、ピアノ伴奏の生徒がなかなか楽譜が読めなくて、とても苦労しているのを見たことがありました。

前の年の伴奏がとても上手に弾けていたので、安心していたのですが、「楽譜を読むのは苦手」とのこと。特に左手の低い音の加線がついている部分は一つずつ一つずつ確認して、ドレミファを書き込んでいました。

一人で楽譜が読めないという状態では、自分で弾きたい曲を楽しむことは難しくなってしまいます。せっかく弾けるのに、とてももったいないことだと思った覚えがあります。

逆に、吹奏楽部の練習が盛んだった学校に勤めていた時には、吹奏楽部の生徒達の譜読みの速さにびっくりしました。合唱コンクールの曲なども、すぐ歌えるようになります。当然のことですが、吹奏楽の演奏もたくさんのレパートリーを短期間にどんどん仕上げていました。

せっかくピアノのレッスンに来るのですから、ぜひ自分で好きな曲が楽しめるようになってほしいと思います。

ですから、楽譜について学んだり、簡単な楽譜をドレミで歌ったりしながら、ソルフェージュの力を伸ばしていくための時間もレッスンの中でとっていきます。特にまだ手のしっかりしていない小さいお子さんの場合には、ソルフェージュの時間を長めにとってレッスンをしていきます。

ソルフェージュ

 

 

 

 

2017.09.06

ピアノは何歳からでも始められます、楽しめます

こんにちは。たうらピアノ教室講師の田浦雅子です。

昨日、チラシが出来ました。さっそくそのチラシがご縁で体験レッスンのお申し込みをしてくださった六十代の方がいらっしゃいます。

ピアノはご自宅にあり、お歌がお好きで、合唱をなさっているそうです。
以前からピアノを習いたいと思っていらっしゃったとのことで、「新しいことにチャレンジしてみたいと思いました。」とおっしゃっていました。

ピアノを始めるのに○歳では遅すぎる、ということはありません。

もちろん、幼児や小中学生のように、身体も脳も成長著しい時期とは違いますが、その分、ピアノを弾くことに対する気持ちの入り方が違うのではないでしょうか。

私の学んでいる奏法は、合理的に脱力した状態(もちろん適切に腕や手の内側で支えた上でですが)で弾くので、らくに弾けてとても身体に優しいのです。先日お会いした私の恩師は、81歳ですが、以前と変わることなくどんどんお弾きになっていました。

私自身も五十代ですが、レッスンを受け、練習をすることで、自分の演奏が変わっていくことを実感しています。

また、以前、ピアノ講師をしている学生時代の友人から、「最高齢は七十代で始めた方で、82歳でレッスンに通い、進歩していらっしゃる。」という話を聞いたこともあります。

脳科学者・澤口俊之先生によると、ピアノを弾くことによって、脳の機能が高まる効果があり、それは子どもだけでなく大人にもあてはまるそうです。楽譜を見ること、鍵盤で音をならすまでの間楽譜の内容を記憶しておくこと、右手と左手を同時に使うこと、さらにその両手がそれぞれ違う動きをすること。これらの要素が脳を刺激するのだそうです。

大人の生徒さんの場合には、ピアノを習う目的や、目標とされるものが個人によって大きく違うと思います。お一人お一人の個性を生かすことを大切に、できるだけご希望に添う形でのレッスンをしていきたいと考えております。

何歳になっても、その年齢に応じた楽しみ方ができる、それもピアノの魅力だと思います。

 

 

 

 

2017.09.05

体験レッスンの一例

こんにちは。たうらピアノ教室講師の田浦雅子です。

少し前の話になりますが、まだオープン前の8月中に、知り合いの方のお孫さんに、ピアノ体験レッスンのモニターをしていただきました。

6歳のかわいい男の子Sくんです。日頃は保育園で元気に遊んでいるそうです。

おばあさまと一緒に来られ、最初、恥ずかしそうにしていました。

まず、右手と左手ゲーム。右手にねこのシールをはってト音記号とヘ音記号を見てもらい、ト音記号の時はねこの手を、ヘ音記号の時は、シールのはっていないほうの手を上げます。何回かやっているうちに、すぐ上手にできるようになりました。

次に、カードを見ながら、言葉に合わせてボンゴをたたきます。トンボだったら3つ、ライオンだったら4つというように。これもとても上手にできました。

 

 

3つめは、鍵盤のカードを、黒鍵を手がかりに並べます。そして、ピアノに移動。

ドの音を探して、3の指(中指)で下から上まで全部見つけて弾きました。どこのドの音が好き?と聞いたら、「ここ」と一番低いドを指さしました。

最後に私の伴奏に合わせて、Sくんに真ん中のドの音を弾いてもらって、連弾をしました。

通っていらっしゃるにはちょっと遠くにお住まいなので、逆にモニターはお願いしやすかったのですが、来る前、とてもどきどきしていたのだそうです。

でも、「面白かったようです。おうちに帰ってから、レッスン内容を話していました。」とおっしゃっていただきました。

小さいお子さんは、個人差が大きく、同じ年齢でもレッスン内容は異なります。

左右の区別がついているかどうか、数字が読めるかどうか、ひらがな・かたかなが読めるかどうかは大きな要素です。また、身体の成長の度合いによって、柔らかい指に無理のかからないよう、歌やソルフェージュを中心にレッスンを進める場合もあります。

教本も何種類か用意して、お子さんに合わせて選んでいきますので、ご安心ください。

2017.09.04

手の使い方を少し変えると響きが変わります

こんにちは。たうらピアノ教室講師の田浦雅子です。

今日は、先生のレッスンを受けてきました。私自身も、少しでも美しい響きで演奏できるよう学ぶ一員です。

モーツァルトの「ピアノソナタ第1番」の第1楽章と、「デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲」の最初の部分を見ていただきました。

前回のレッスンで、手首の位置がそれまでより、もう少し持ち上げたほうが響きがまるくなるということを教えていただき、この2週間はそれを意識して練習していたつもりでした。

まず、ピアノソナタから。
先生のピアノで弾くとあれ?何か違う、イメージしたほど音が上にあがらない。

原因の一つは鍵盤の底に触れる時間を短く、と意識しすぎてしまったこと。そのために、鍵盤の底にきちんと触れず、浮いた音になってしまっていました。
もう一つは、手首の下側で支える意識が足りなかったこと。

その二点に気をつけたら、少し良くなってきました。

デュポールは今日初めて持っていきました。とても美しい曲で、弾いていて楽しくなります。

テーマの右手の最初の二分音符。やはり鍵盤の底の触れ方が足りないため、音が伸びません。そのあとの二分音符も同じです。底まで触れることを意識しすぎると、今度はいきなり大きい音が出てしまいます。この部分の手の使い方を教えていただき、次回までの課題です。

変奏の部分では、左手の16分音符の響きに課題がありました。手のひらの内側で支えながらゆっくり弾く練習が必要と教えていただきました。

最後にお願いして、ブルグミュラー25の練習曲から「アヴェ・マリア」を聞いていただきました。

これもとても美しい曲で、大好きです。手の置き方の角度と、力の向きを変えてみるようご指導いただくと、最初とは響き方が違ってきました。

手首の高さ、鍵盤の底に触れる時間、手の置き方の角度、力のかけ方の向き等、ほんの少しの違いでピアノの音の響きが変わってきます。うまくポイントをつかむと音が上にあがる感覚になります。

響きが変わっていくのを楽しみに、また明日から練習していきます。

ちなみに、写真の私の楽譜ですが、裏に書いてある値段をみたら、何と130円でした!確か昭和44年か45年頃に買ったものだった気がします。

 

 

 

 

2017.09.04

響きのあるピアノの音色とは?

こんにちは。たうらピアノ教室講師の田浦雅子です。

「響きのあるピアノの音色を大切に」と昨日も書きましたが、では、その響きとは何なのでしょうか。

私自身も、響きを聞きなさい、と言われ続けていた学生時代には、正直、つかみきれていませんでした。

実は、響きの正体は「倍音」です。

ピアノでは分かりにくいので、おもちゃの鉄琴を使って実験してみます。

まず、マレットを軽く握って、鉄琴をたたいてみます。こんな音がします。

 

次に、マレットをぎゅっと握りしめて、鉄琴をたたいてみます。こんな音になります。

最初の音のほうが響いていることがお分かりになるでしょうか。録音なので、実際に聞くと、響く音のほうがずっと長く聞こえます。

このときの音の周波数の分布を解析ソフトを使って表示してみました。鉄琴で1つの音だけたたいても、その中には、いろいろな周波数の音が含まれています。

響く音は次のようになります。赤で囲んだ部分にご注目ください。

響かない音は次のようになります。上の音と周波数の分布が違います。特に高い周波数はあまり含まれていないことがわかります。

この違いが、響きの違いになります。

ピアノでも同じことが起こります。鉄琴をたたいた時、マレットを握りしめると響かなくなったように、指に力が入っているとピアノの音の響きがなくなってしまいます。

ピアノで響く音を出すためには、鍵盤の底にふれる時間を短くすることが必要です。そのためには、手首の下や手の内側で支えた上で、指は脱力することがとても大切なのです。

鉄琴の場合、多くの方が響く音のほうを美しいと感じるでしょう。

ピアノでも、響きのある音でピアノを弾いたほうが、弾く喜びをより味わえると、私は実感しています。ですから、少しでも、自分の理想の響きに近づけるようにしていきたいと思っています。