「2019年 2月」の記事一覧

2019.02.04

空間を考えてピアノ伴奏を弾く

昨日は、大学時代の友人といっしょに、伴奏者として声楽のレッスンを受けに国立まで行ってきました。歌のレッスンは、自分がかつて受けていた大学時代以来ですから、新鮮な体験でした。

今回は、オペラ「フィガロの結婚」の中の、ケルビーノの「Voi, che sapete]」(恋の悩みしる君は)というアリアです。

オーケストラの音をピアノで表現することの難しさ

事前準備として、実際に弾き始める前に歌詞を音節に分け、アクセントの位置を確認すること、オーケストラで行なわれているオペラでの演奏をいろいろ聴き比べることはしていました。

オーケストラでの伴奏(という言い方は違う気がするのですが)を聴いていると、出だしはクラリネットです。その木管の響きをピアノで出すのが難しい。

左手にはスタッカートがついていて、それは弦楽器のピチカート。ペダルを踏むと管楽器の響きには少し近づけるものの、今度はピチカートの雰囲気は出ないし…。

その都度その都度、木管楽器と弦楽器のピチカートのどちらを優先するのかを考えながら、ペダルの踏み方を変えていくことにしました。

無料楽譜サイトでフルスコアをダウンロードできるので(なんてありがたいことでしょう!)、それも見ておいて、持って行くことにしました。

楽譜の違い

友人が使っていて見ている楽譜が、私の伴奏で使っている楽譜と違うことは、練習の時に知っていました。友人が先生にコピーして渡したのは、友人自身が使っている楽譜と同じ。

伴奏者の私だけが、違う楽譜を見て弾いている、ということになります。

途中で、「伴奏の、そこのソの音をもっと出して」と先生がおっしゃったのですが、ピアノで弾いている私としては、左手の低い音をあまり大きく出すことに、違和感があります。

「このソですか?」と弾いてみて確認すると、先生がそこで、「あれ?伴奏譜、僕の見ているのと違う。」ということで見比べることに。

バイオリンが弓を使って弾く部分です。友人の楽譜は、オーケストラの出す音で右手で弾く伴奏になっています。それなら、違和感はありません。

「モーツァルトは特に。楽譜が違うと、変わってくるよ。」とおっしゃっていました。確かにそうですね。歌とピアノを一つに考えた時に、違ってくると思います。それがよく分かりました。

空間を考える

もう一つ、「この部屋と、ホールとでは空間の大きさが違っていて、音の響き方が違うので、それを意識していくことが大切です。」という先生の言葉を聞いた時、「やっぱり」と思いました。

これは、ピアノ独奏でも同じですから、よく分かります。できるだけ、空間に響いている音を聞こうとする意識を持つこと。

ピアノと歌が一緒になった音が客席でどのように聞こえるかを意識しながら聞くこと。

実際に、ホールでのリハーサルは回数が少ない上に、客席に人が入ると響き方が全く違ってきます。その中で、いかに空間の響きをとらえられるようにしていくかが問われますね。

これは、今回、私が伴奏を弾く上での課題です。歌う人がいかに歌いやすく、そして、客席で聞いてくださる方により良い音楽が届けられるように、また、練習をしていきます。

支えを作っていく

大人の方のレッスンもさまざまです。子供の頃に経験があって、ここで改めて奏法も含めてレッスンを開始した方がいます。

「ロシア奏法による初めの一歩」を使って、レッスンをしていくことにしました。

私の先生の著書、「『響き』に革命を起こす ロシアピアニズム」には「日本人がイメージする『ロシア奏法』という『奏法』は存在しない」と書いてあります。

確かに、そのとおりです。ただ、「現在日本語で出版されているものの中」では、ロシアの教本を訳したこともあって、支えを作るイメージを持ちやすいという点で、使いやすいと判断したのです。

身体の使い方を意識していく

椅子に浅く腰かけること。身体をおへその下の「丹田」を意識して前傾させ、自然に下向きの力が使えるようにすること。足でしっかり身体を支えること。

これを意識していくことから始めます。

同時に、手を自然に置くと、手は逆ハの字になるはずなのですが、ピアノを弾いた経験のある人は、むしろこれが難しいようです。

どうしても、肘が横に張って「まっすぐ」あるいは「ハの字」になってしまいます。この方も、右手は上手にできるのですが、左手が難しいようでした。

私自身をふり返っても、右手はできるのに、左手がうまくできない状態が長く続きました。当時は練習時間もあまり取れなかったので、筋肉がついてきて、ある程度形ができるようになるのに、1年以上かかってしまいました。

手の内側の支えを作る

その上で、手の内側の支えを意識して音を出していきます。

最初は3の指、中指から。指の付け根から曲げて、手の内側の筋肉を意識して一音を響かせていきます。

前回、鉄琴を使って、「響く」ということのイメージを持ってもらいました。そのイメージを頭に置きながら、指で鍵盤を弾いて、すぐ力を抜く、その練習をしていきました。

何回か練習しているうちに、少しずつ、コツがつかめてきたようです。

らせん階段を上るように

進歩のイメージは、つい直線になりがちです。そうすると、同じことを指摘されると、進歩していないように感じがち。でも、実際はそうではありません。

私はらせん階段をイメージしています。同じところを通っているように思っても、一周回っていれば、その分だけ違うとらえ方ができるし、違う景色が見える。

例えば、逆ハの字に手をおくこと。続けていれば、前回よりも、前腕の筋肉がついているわけですから、「実際にできる」状態に近づいています。

ついつい、すぐ結果を求めがちですが、少しずつ少しずつ。でも着実に「響き」が出せるようにしていく。

私自身も、その学びの中にいるひとりです。常により良い響きを求める気持ちを常に持ちつつ、らせん階段を一歩ずつ上っていきます。

ピアノを習うことにはこんな良さもあります

ピアノを習うことによって、ピアノの上達以外にも、お子さんの成長が実感できる場面があります。

今日は、そのことについて書いていきます。

学校の音楽の授業に積極的になる

昨日のレッスンで、小学生の生徒さんがこんな話をしてくれました。

「次の参観日で、算数チームとか、国語チームとかに分かれるんだけど、私は当然音楽チーム!」

2月中旬に行なわれる参観日は、学習発表会。それぞれが好きな教科のチームに別れて発表するのだそうです。

「何をするの?」と聞くと「たぶん、リコーダーでエーデルワイスをやると思う。」とのこと。

楽しんで、積極的に音楽の授業を受けている様子が伝わってきて、とてもうれしくなりました。

継続する力・努力する力

当然のことながら、継続して何かをする力もつきます。私の教室の保護者の方が、アンケートに書いてくださった内容をご紹介しますね。

毎日、習慣的に何かを続けるということは大人でも難しいと感じますが、やはり、ピアノを弾くとうことが楽しいようで、自らピアノに向かい、娘の生活の一部となっています。

毎日、少しずつでも練習したほうが弾けるようになるということが分かってきたみたいで、努力できるようになってきました。

自分がやりたいと決めたことに対して、練習等めげずに頑張りたいという気持ちが大きくなりました。

積極性・自主性・集中力

積極性・自主性・集中力もついてきます。自分が「こうしたい」という思いが出てくるということは、レッスンしていても感じます。

自分からやってみようとする自主性であったり、集中力が増したと思います。「うちの子、こんなに○○できるんだ!」という我が子の新たな発見が多くあり、子供の可能性の大きさを実感しています。

自分が弾きたい曲の楽譜を買ってほしいと、欲が出てきました。

ピアノの宿題で、ひらがなやカタカナや数字を書くために、字の練習ももっとやりたいと頑張っています。

ピアノのレッスンを始めたことによって、積極的になにかに取り組むということができるようになってきたと感じます。

お子さんの可能性はたくさんあります

お子さんは、どんどん大きくなっていきます。多くの可能性を持っています。

ピアノを習うことによって、他のさまざまな面でも成長が見られるということを、ぜひ知っていただきたいと思いました。

幼稚園、学校に通っている生徒さんは、3学期でまとめの時期に入っています。4月に比べて、身長もぐんと伸びて、たくましくなっていることに気づき、微笑ましく思っている今日この頃です。

時には自分の弾きたい曲を選んでみよう

ピアノのレッスンだと、どうしても、教本中心になります。ある程度はやむを得ない部分もありますが、せっかく弾けるようになってきたのですから、時には、自分の弾きたい曲を選んで弾いていくことも、楽しさにつながります。

私自身はポップスを弾きませんが、生徒さんの希望を入れて時々は、そういう曲をレッスンの中に入れていきます。

音楽は楽しむことが大切。一方で、基本的な弾き方をしっかり身につけること。そして、いろいろな作曲家の音楽に親しみ、その美しさに触れて、感性を磨いていくこと。

もう一方で、自分たちの身近な音楽を楽しみながらピアノを弾くこと。この両方を、ピアノを学んでいくことで経験できます。

今、ある生徒さんは、あいみょんの「マリーゴールド」を、別の生徒さんは米津玄師の「lemon」を弾いています。

やはり、クラシックを中心に勉強してきた生徒さんは、タイがとてもたくさん使われているリズムに、少し難しさを感じるようです。

ただ、歌を知っているので、歌のイメージをしっかり持っていくことで、合わせやすくなっていきます。

幼稚園年長の生徒さんも、ずいぶん両手で弾けるようになってきました。

いろいろな曲を練習する中、「ジブリやディズニーの曲が弾いてみたい」ということで、楽譜を探してみることになっています。

ピアノとの付き合い方はさまざま。街のピアノ教室だからこそ、こだわる部分はこだわりつつ、生徒さんの生活が音楽を通して豊かなものになる、そんなお手伝いをしたいと考えています。