「2019年」の記事一覧

2019.02.05

響きを楽しむ

新しいピアノが来て2ヶ月めに入りました。最近、ようやくピアノも落ち着いてきたのか、気持ちの良い響きが上がってくることが増えてきました。

前回の自分のレッスンで「弾きすぎていた」

前回、自分自身のレッスンに行った時に、先生のピアノを弾いた時、やはり、響きが低いところによどんだ感じがしていました。

先生から「どうですか?」と逆に聞かれ、「うーん。何だか違う気がする。」と思いつつ、姿勢、腕、手首、指…とまた自分の中で確認した上で、弾き直しました。

2回めのほうがだいぶ良くなっていましたが、まだもう一つ、響きが上がらない感じがします。

「今度のほうが良いですね。まだ大きい音を出そうとして、弾きすぎています。」と言っていただき、さらに、浅いところをねらうこと、虫様筋で支えて引き上げる力を意識したところ、ようやく響きが上がってきました。

家のピアノで弾く時に、思うように響かない感じがしていて、ついつい弾きすぎていたようです。

改めて家のピアノで弾いてみる

ここのところ、伴奏や作品発表の練習をすることが多く、譜面台を立てて弾いています。譜面台にさえぎられて、自分の響きが聞きにくい環境で弾く時間がながかったため、ついつい大きな音を出す意識になっていたのかもしれません。

家に帰ってから、譜面台を寝かせ、バッハを弾いてみました。身体の重心、姿勢、肩、腕、手首、指。浅いところをねらう。虫様筋。

音の大きさではなくて、響きを聴く。弾くことではなく、聴くことに意識の重点を持っていく。

夜だったので、昼間の間にちょうど良い気温が続いていたこともあって、気持ち良く響いてくれました。

やはり「弾きすぎていた」ようです。響きが上がってくると、本当に楽しい。いろいろな響き、いろいろなニュアンスの音を使えるようになります。

響きを楽しむ

日曜日の声楽のレッスンの時、「和声が変わるので、その変化をもっと出して。」とご指導いただいた部分がありました。

そういう時にも、響きによってすぐ変えることができます。指を入れる方向を意識することでも響きは変わってきます。

そういう引き出しをたくさん持っていることが、音楽を作る上では本当に大切です。同時に、楽しさが増えることでもあります。

響きを楽しむ、響きで音楽を作る。とても楽しいことです。

2019.02.04

空間を考えてピアノ伴奏を弾く

昨日は、大学時代の友人といっしょに、伴奏者として声楽のレッスンを受けに国立まで行ってきました。歌のレッスンは、自分がかつて受けていた大学時代以来ですから、新鮮な体験でした。

今回は、オペラ「フィガロの結婚」の中の、ケルビーノの「Voi, che sapete]」(恋の悩みしる君は)というアリアです。

オーケストラの音をピアノで表現することの難しさ

事前準備として、実際に弾き始める前に歌詞を音節に分け、アクセントの位置を確認すること、オーケストラで行なわれているオペラでの演奏をいろいろ聴き比べることはしていました。

オーケストラでの伴奏(という言い方は違う気がするのですが)を聴いていると、出だしはクラリネットです。その木管の響きをピアノで出すのが難しい。

左手にはスタッカートがついていて、それは弦楽器のピチカート。ペダルを踏むと管楽器の響きには少し近づけるものの、今度はピチカートの雰囲気は出ないし…。

その都度その都度、木管楽器と弦楽器のピチカートのどちらを優先するのかを考えながら、ペダルの踏み方を変えていくことにしました。

無料楽譜サイトでフルスコアをダウンロードできるので(なんてありがたいことでしょう!)、それも見ておいて、持って行くことにしました。

楽譜の違い

友人が使っていて見ている楽譜が、私の伴奏で使っている楽譜と違うことは、練習の時に知っていました。友人が先生にコピーして渡したのは、友人自身が使っている楽譜と同じ。

伴奏者の私だけが、違う楽譜を見て弾いている、ということになります。

途中で、「伴奏の、そこのソの音をもっと出して」と先生がおっしゃったのですが、ピアノで弾いている私としては、左手の低い音をあまり大きく出すことに、違和感があります。

「このソですか?」と弾いてみて確認すると、先生がそこで、「あれ?伴奏譜、僕の見ているのと違う。」ということで見比べることに。

バイオリンが弓を使って弾く部分です。友人の楽譜は、オーケストラの出す音で右手で弾く伴奏になっています。それなら、違和感はありません。

「モーツァルトは特に。楽譜が違うと、変わってくるよ。」とおっしゃっていました。確かにそうですね。歌とピアノを一つに考えた時に、違ってくると思います。それがよく分かりました。

空間を考える

もう一つ、「この部屋と、ホールとでは空間の大きさが違っていて、音の響き方が違うので、それを意識していくことが大切です。」という先生の言葉を聞いた時、「やっぱり」と思いました。

これは、ピアノ独奏でも同じですから、よく分かります。できるだけ、空間に響いている音を聞こうとする意識を持つこと。

ピアノと歌が一緒になった音が客席でどのように聞こえるかを意識しながら聞くこと。

実際に、ホールでのリハーサルは回数が少ない上に、客席に人が入ると響き方が全く違ってきます。その中で、いかに空間の響きをとらえられるようにしていくかが問われますね。

これは、今回、私が伴奏を弾く上での課題です。歌う人がいかに歌いやすく、そして、客席で聞いてくださる方により良い音楽が届けられるように、また、練習をしていきます。

支えを作っていく

大人の方のレッスンもさまざまです。子供の頃に経験があって、ここで改めて奏法も含めてレッスンを開始した方がいます。

「ロシア奏法による初めの一歩」を使って、レッスンをしていくことにしました。

私の先生の著書、「『響き』に革命を起こす ロシアピアニズム」には「日本人がイメージする『ロシア奏法』という『奏法』は存在しない」と書いてあります。

確かに、そのとおりです。ただ、「現在日本語で出版されているものの中」では、ロシアの教本を訳したこともあって、支えを作るイメージを持ちやすいという点で、使いやすいと判断したのです。

身体の使い方を意識していく

椅子に浅く腰かけること。身体をおへその下の「丹田」を意識して前傾させ、自然に下向きの力が使えるようにすること。足でしっかり身体を支えること。

これを意識していくことから始めます。

同時に、手を自然に置くと、手は逆ハの字になるはずなのですが、ピアノを弾いた経験のある人は、むしろこれが難しいようです。

どうしても、肘が横に張って「まっすぐ」あるいは「ハの字」になってしまいます。この方も、右手は上手にできるのですが、左手が難しいようでした。

私自身をふり返っても、右手はできるのに、左手がうまくできない状態が長く続きました。当時は練習時間もあまり取れなかったので、筋肉がついてきて、ある程度形ができるようになるのに、1年以上かかってしまいました。

手の内側の支えを作る

その上で、手の内側の支えを意識して音を出していきます。

最初は3の指、中指から。指の付け根から曲げて、手の内側の筋肉を意識して一音を響かせていきます。

前回、鉄琴を使って、「響く」ということのイメージを持ってもらいました。そのイメージを頭に置きながら、指で鍵盤を弾いて、すぐ力を抜く、その練習をしていきました。

何回か練習しているうちに、少しずつ、コツがつかめてきたようです。

らせん階段を上るように

進歩のイメージは、つい直線になりがちです。そうすると、同じことを指摘されると、進歩していないように感じがち。でも、実際はそうではありません。

私はらせん階段をイメージしています。同じところを通っているように思っても、一周回っていれば、その分だけ違うとらえ方ができるし、違う景色が見える。

例えば、逆ハの字に手をおくこと。続けていれば、前回よりも、前腕の筋肉がついているわけですから、「実際にできる」状態に近づいています。

ついつい、すぐ結果を求めがちですが、少しずつ少しずつ。でも着実に「響き」が出せるようにしていく。

私自身も、その学びの中にいるひとりです。常により良い響きを求める気持ちを常に持ちつつ、らせん階段を一歩ずつ上っていきます。

ピアノを習うことにはこんな良さもあります

ピアノを習うことによって、ピアノの上達以外にも、お子さんの成長が実感できる場面があります。

今日は、そのことについて書いていきます。

学校の音楽の授業に積極的になる

昨日のレッスンで、小学生の生徒さんがこんな話をしてくれました。

「次の参観日で、算数チームとか、国語チームとかに分かれるんだけど、私は当然音楽チーム!」

2月中旬に行なわれる参観日は、学習発表会。それぞれが好きな教科のチームに別れて発表するのだそうです。

「何をするの?」と聞くと「たぶん、リコーダーでエーデルワイスをやると思う。」とのこと。

楽しんで、積極的に音楽の授業を受けている様子が伝わってきて、とてもうれしくなりました。

継続する力・努力する力

当然のことながら、継続して何かをする力もつきます。私の教室の保護者の方が、アンケートに書いてくださった内容をご紹介しますね。

毎日、習慣的に何かを続けるということは大人でも難しいと感じますが、やはり、ピアノを弾くとうことが楽しいようで、自らピアノに向かい、娘の生活の一部となっています。

毎日、少しずつでも練習したほうが弾けるようになるということが分かってきたみたいで、努力できるようになってきました。

自分がやりたいと決めたことに対して、練習等めげずに頑張りたいという気持ちが大きくなりました。

積極性・自主性・集中力

積極性・自主性・集中力もついてきます。自分が「こうしたい」という思いが出てくるということは、レッスンしていても感じます。

自分からやってみようとする自主性であったり、集中力が増したと思います。「うちの子、こんなに○○できるんだ!」という我が子の新たな発見が多くあり、子供の可能性の大きさを実感しています。

自分が弾きたい曲の楽譜を買ってほしいと、欲が出てきました。

ピアノの宿題で、ひらがなやカタカナや数字を書くために、字の練習ももっとやりたいと頑張っています。

ピアノのレッスンを始めたことによって、積極的になにかに取り組むということができるようになってきたと感じます。

お子さんの可能性はたくさんあります

お子さんは、どんどん大きくなっていきます。多くの可能性を持っています。

ピアノを習うことによって、他のさまざまな面でも成長が見られるということを、ぜひ知っていただきたいと思いました。

幼稚園、学校に通っている生徒さんは、3学期でまとめの時期に入っています。4月に比べて、身長もぐんと伸びて、たくましくなっていることに気づき、微笑ましく思っている今日この頃です。

時には自分の弾きたい曲を選んでみよう

ピアノのレッスンだと、どうしても、教本中心になります。ある程度はやむを得ない部分もありますが、せっかく弾けるようになってきたのですから、時には、自分の弾きたい曲を選んで弾いていくことも、楽しさにつながります。

私自身はポップスを弾きませんが、生徒さんの希望を入れて時々は、そういう曲をレッスンの中に入れていきます。

音楽は楽しむことが大切。一方で、基本的な弾き方をしっかり身につけること。そして、いろいろな作曲家の音楽に親しみ、その美しさに触れて、感性を磨いていくこと。

もう一方で、自分たちの身近な音楽を楽しみながらピアノを弾くこと。この両方を、ピアノを学んでいくことで経験できます。

今、ある生徒さんは、あいみょんの「マリーゴールド」を、別の生徒さんは米津玄師の「lemon」を弾いています。

やはり、クラシックを中心に勉強してきた生徒さんは、タイがとてもたくさん使われているリズムに、少し難しさを感じるようです。

ただ、歌を知っているので、歌のイメージをしっかり持っていくことで、合わせやすくなっていきます。

幼稚園年長の生徒さんも、ずいぶん両手で弾けるようになってきました。

いろいろな曲を練習する中、「ジブリやディズニーの曲が弾いてみたい」ということで、楽譜を探してみることになっています。

ピアノとの付き合い方はさまざま。街のピアノ教室だからこそ、こだわる部分はこだわりつつ、生徒さんの生活が音楽を通して豊かなものになる、そんなお手伝いをしたいと考えています。

2019.01.31

左右の手が別々の動きをする時、脳はたくさん活動している

ピアノは、左右の手が別々の動きをします。その時、脳はたくさん活動しています。

今、左右の手が別々の動きをする段階に入った生徒さんがたくさんいます。この段階に入ることはピアノを学ぶ上で、1つ大きなステップを上がることになるので、脳もそれに対応していかなくてはなりません。

両手を動かす時、脳は多く活動している

両手を動かしている時の脳の活動を見ると、左右同じ動きのときよりも、左右反対の動きをするときのほうが、運動に関連する脳の領域が、より多く活動しています。つまり、左右別々の動きをするときのほうが、脳にとって「大変」なわけです。

古屋晋一 ピアニストの脳を科学する(春秋社) P.27,29

右手を左側の脳が、左手を右側の脳が動かしているというのは、よく知られています。

ただ、それがバラバラに動いているわけではないのは、間につなぐ橋があるからです。

その橋を通して、左右の脳の間に情報が行き来します。ですから、別々に動かすときには、つられないように脳もはたらく必要があるわけです。

ピアニストの脳は「余力」がある

ところが、ある研究で、左右別々の動きをしているピアニストの脳活動を測ってみたところ、驚いたことに、左右同じ動きの時の」脳活動と差がありませんでした。(中略)

ピアニストの脳は、両手を独立して動かしても、複雑な情報処理をする必要がないということで、もっと複雑で素早い動きをする「余力」を残しているとも言えます。

古屋晋一 ピアニストの脳を科学する(春秋社) P.29~30

子供の頃からずっと訓練をしているピアニストの脳には余力があって、左右別々の動きにも対応できる、ということなのです。

慣れるまでは練習が必要

最初からどんどんできるわけではありません。慣れるまではやはり練習が必要です。

今、ちょうどその段階にきている生徒さんたちも、それぞれ「弾きにくい」「つられる」と言いながら、練習しています。

でも、それは「ピアノらしい」動きにつながっているので、楽しみでもあるようです。知っている曲もメロディーと伴奏で弾けるようになっていきますから、頑張って練習しています。

お子さんの場合には、この段階がスムーズです。しばらくすると、上手に左右違う動きができるようになってきます。

人間の脳というのは、ずいぶん柔軟性のあるものであると感心するとともに、ピアノを弾くことで、能力そのものが変わっていく、向上していくということを改めてうれしく思いながら、生徒さんの成長を見ています。

オーディションにチャレンジすることの意味

昨日は、小学校の伴奏オーディションに向けて、最後のレッスンをしました。

小学校の伴奏のオーディションは、今までも、何か行事などでピアノ伴奏を弾く機会があるごとに行なわれてきました。今回は、卒業式の合唱の伴奏です。

コントロールできることに意識を向ける

その生徒さんは、今までも何回もチャレンジしてきました。選ばれて実際に伴奏したことも何度もありますし、残念な結果だったこともありました。

オーディションは、当然のことながら、「結果として選ばれる」ためにチャレンジします。そのために練習を重ねていきます。

でも、選ばれること「だけ」を目標にすると「選ばれなかった私」は否定されてしまった気持ちになります。

オーディションにチャレンジする時は、自分でコントロールできることとできないことに分けてとらえること、コントロールできることに意識を向けて最善を尽くすこと、をいつも言っています。

国際コンクールでさえ常に意見は分かれ、時には「あの人が1位でないのなら帰る」と審査員が怒って帰ってしまうこともあるくらい、演奏者を「選ぶ」ということは難しいもの。

それだけに、チャレンジするときは、その過程に最善をつくすこと、自分なりに納得できる演奏ができること、その部分に意識を向けるようにしていくことが大切なのです。

練習の過程で上達する部分に意識を向ける

最善を尽くそうと努力する中で、ピアノそのものも、上達していきます。一度本番を経験すると、ぐんと上達することは、よく言われます。

今回、オーディションを受ける生徒さんも、今まで何度もチャレンジする中で、読譜の力がつき、短期間で弾けるようになりました。

細かく和声の変化を感じ取って、表現していく力もついてきました。逆に、曲全体を大きくつかんで、表現していく力もついてきました。

これらは、オーディションという本番を何回も経験したからこそ、短期間で大きく進歩することができたのです。

あとは本番で自分の最善を尽くすだけ

昨日のレッスンで聞かせてもらったところ、前回のレッスン時から、だいぶ弾き込んだとのことで、さらに上手になっていました。

もともと細やかな感性をお持ちのお子さんなので、練習をしっかり重ねてとても美しく弾くことができていました。

メトロノームでのテンポの確認。体育館で弾くとのことなので、音を遠くに飛ばす意識とそのための身体の使い方の確認。

そして、本番前にチェックするべきポイントをいくつかアドバイスしました。

「もうここまでやってあるから、大丈夫。本番も上手に弾ける。結果は待つしかないからね。」と話すと、「はい。選ぶのは、先生たちですから。」と今までに何回も言っていることなので、そんな答えが返ってきました。

本番で、自分の納得にいく演奏ができることを信じて、教室からエールを送りつつ、報告を待つことにします。

2019.01.28

「響き」に革命をを起こす ロシアピニズム

昨日、ようやく先生のご著書が届きました。さっそく読んでみました。

「第1章 響きの正体」から始まって「第6章 芸術をつくるということ」まで、幅広いテーマで、ロシアピニズムに関するさまざまな内容が書かれています。

今回は、特に第1章・第2章に書かれている内容を中心に、私が再認識したこと、私自身が体験したことをもとにご紹介できたらと思います。

何を目指すのか

 私自身がピアノを演奏することで、何を表現していきたいのだろう?ということを深く考えるようになったのは、ロシアピアニズムを学ぶようになってからのことです。

それ以前も、もちろん考えなかったわけではないのですが、感覚が違ってきたように思うのです。

まだ大野先生のレッスンに行き始めて間もない頃。「その1音に、人生が表れている?」と聞かれ「え?そんな大げさな…。1音で?そんな無理なことを…。」と思ったことを覚えています。

 音楽はただ弾いただけでは聴こえてこない「何か(Something)」を聴衆に聴こえるように演奏する芸術だ。そのために倍音の果たす役割は大きい。 

 その「何か」がなくては、演奏家と聴衆の真のコミュニケーション、作曲家と演奏家の真のコミュニケーションは成立しない。(中略)

 演奏家の使命は、作曲家の書き残したものを手掛かりに、書かれてある以上の「何か」を再現し、聴衆に伝えることなのだから。

「響き」に革命を起こす ロシアピアニズム p.26

当時の、私の演奏には「何か」が感じられなかったのでしょうね。意識もしていなかった。今、この本を読むことで、改めて当時を思い出しました。

今は、少なくとも「何か」を「意識」はしています。それは、倍音で音楽を作っていく重要性を認識できたからこそのことです。

演奏時の感覚について

この本には次のようなことが書いてあります。

 以前は「何かしよう。」という意識が働いていたが、今はまったくそのような意識は持たない。無我の境地に非常に近い。それは、奏法を変えたことにより、どう演奏するかを響きが自然に教えてくれるようになったからだ。それにより頭で考える必要はなくなり、心の赴くままに演奏ができるようになった。

 響きがイマジネーションを豊かにしてくれるのだ。


「響き」に革命を起こす ロシアピアニズム p. 64

 先生のように、無我の境地とはなかなかいかないのですが、「考える」より「感じる」要素が大きくなっていくのも確かです。

ここは、どんな響きで弾いていくと、より美しいだろう?ここは、こういう響きを使ってみたい。

演奏しているときに、そんな感覚になることが増えてきました。そうすると、いつも同じ響きではなくて、その時々によっても変わっていきます。

今日はこんな感じ。今はこんな感じ。日によって、時によって自由度が高まっていきます。「ねばならない」が少なくなる分、自由に自分の心に忠実になる感じがします。

原点を思い出す

今回、このご著書を読むことで、自分の音楽への原点を、また思い出した感覚があります。

今回は、ほんの一部のご紹介ですので、またこの後、取り上げていきたいと思っています。

「鍵盤は『叩かない』んですね。」体験レッスンの方の言葉

昨日、大人の生徒さんが体験レッスンにお見えになって、入会を決めてくれました。

子供の頃、習っていて、「バイエルとブルグミュラーまでやってやめました。その後、小学校の教員免許を取る関係で、バイエルをまた弾きました。」とのことでした。

一通りお話して、私の奏法についてご説明すると、とても興味を持ってくださって、「鍵盤って『叩かない』んですね。何だかピアノは、指で鍵盤を叩くイメージがありました。」とおっしゃるのです。

そう言われてみれば、そうかもしれません。私も子供の頃に言われた(楽譜に先生の書き込みが残っていました)ことは、「指を上げて鍵盤の底までしっかり弾く」でしたが、指を上げてから「しっかり底まで」下ろせば、叩く感じに近くなります。

「そんなに指を使わなくて大丈夫です。ピアノは、音が出ますから。」と言うと「何だか今までと違っていて、おもしろそうです。」とのこと。

その後、私が弾いているところを見ていただきましたが、「確かに、叩いていないですね。手の使い方が、子供の頃、自分が習ったのとは違います。」とおっしゃっていました。

身体を前傾させ、腕の重みが鍵盤に伝わるように、肩、肘、手首の使い方も従来の奏法とは違います。

指ももちろん、手の内側の筋肉や虫様筋は使いますが、指そのものを上げる、という動きはありません。

ですから、自然で無理なく弾くことができます。

まずは、中指を使って、指の支えのイメージをつかむところから、始めることにしました。子供の頃に習っていたので、しばらくすると、指の感じも戻ってくるでしょう。

そうすれば、より楽に、そして豊かな音色でピアノを楽しむことができます。これからがとても楽しみです。

拍を感じながら弾こう

小学校6年生の生徒さんが、あいみょんのうたう「マリーゴールド」を弾きたいということで、練習を始めました。

クラシックとは違う部分もあって、楽しみながらも「難しい~!」と言って、レッスンに持ってきました。

私も、歌を聞いてみて(楽譜を見ながら歌ってみて)弾いてみて、生徒さんの弾くのを聞いて、なるほど、と感じた部分があるので、それについて書いてみます。

シンコペーション

やはり、なんと言ってもシンコペーションの多さ。

歌を聞いていると、それがとても自然で、だからこそ、音楽が前に進んで魅力的なのですが、それを楽譜にタイをたくさん使って書き、さらにそれを音にするとなると、話は違ってきます。

生徒さんも「右と左を合わせようとすると、すごく難しくなる。」と言っていましたが、その原因はこのシンコペーションを使ったリズムにあるのです。

歌の場合には、歌う人が拍を感じてバンドの演奏に合わせて歌えば良いのですが、右手と左手とで別々にリズムを刻むことは意外に難しいのです。

左右それぞれをリズムを感じながら練習する

伴奏の練習をたくさんしていたために、どうしても、他の曲の練習時間が少なくなりがちです。

片手ずつまず弾いてもらったのですが、4拍子を感じながら弾けるところまでには、あと一歩でした。

それを少し練習して、前奏部分の両手を合わせてみると、なんとか合わせることができました。

右手は右手で、歌のイメージを持ちながら、でも1234の拍子は常に意識する。左手は左手で、同じく1234の拍子を意識する。

それができてから、両手の練習。この手順を確実に踏むことが結果的に早道のようです。

ポピュラー音楽に限らない

もっとも、これはポピュラー音楽に限りません。どんな曲でも同じです。拍感、拍子感は常に大切です。

そして、その上にフレーズ感。特に歌詞のあるもの、伴奏を弾くときには、言葉と音との関係もしっかり見ていく必要があります。

「また、練習してきます。」と言って帰っていく生徒さん。夏のマリーゴールドの花のように元気で明るく、私も元気と明るさをたくさん分けてもらいました。