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2019.01.03

オペラでわかるヨーロッパ史―読みながら世界史の勉強をしました

こんにちは。

ここ数日は、読書の時間がいつもより多く取れました。

ピアノも大好きですが、オペラも大好き。「オペラでわかるヨーロッパ史」という本を読みました。

新書なので、さらっと読めます。

読みながらヴェルディが多いな、とは思ったのですが、後書きに「筆者がヴェルディを偏愛しているせいもあり、またヴェルディの作品に大河ドラマ的なものが多いため、彼の作品が多くなってしまった」という記述があり、納得。

日本史は好きだったのですが、世界史は知らないこと、覚えていないことが多く、そういえばそうだっけ?と1つ1つ「学習」した状態でした。

印象に残ったことをいくつか書いていきます。

検閲との闘いがあったこと

オペラへの検閲があったことは、知っていました。例えば、この本にも取り上げられている「ドン・カルロ」が検閲を通すために、話の舞台をアメリカに変えて、人物の設定も変えた、ということ。

でも、実際は私が事前に知っていたことよりも、はるかに多くの厳しい検閲がありましたし、土壇場になって上演が流れてしまったこともあったそうです。

しかし、ゲネプロ(最終リハーサル)後、ナポリを治める両シチリア王国の国王から横やりが入り、初演は流れてしまう。シラーの戯曲が許容されたミラノや北イタリアと違い、シチリア王国は保守的で、舞台で王族の処刑を扱うことに待ったがかかったのだ。

オペラでわかるヨーロッパ史 第二部 二 弾道台の女王―マリア・ストゥアルダ p.139

「マリア・ストゥアルダ」の初演は1835年のミラノ。ナポリでは上演できずに、ミラノでということからもわかるように、地域差も大きかったようです。

それから20年以上たってからヴェルディが作曲した仮面舞踏会も、ナポリでは初演できず、1859年、ローマに変わって初演になりました。

《仮面舞踏会》は、ナポリで初演されるはずだった。それがローマに変わったのは、「検閲」のためである。ナポリの検閲当局は、実在の国王の暗殺事件と、フィクションとはいえ、「不倫」を盛り込んだ物語を許さなかった。


オペラでわかるヨーロッパ史  第三部 三 「検閲」の向こう側―仮面舞踏会 p.187

識字率が低かった当時、劇場の影響力は強く、小説では許された表現も舞台にかけるオペラでは許されなかったことなど、そのあたりの事情も詳しく書かれていました。

作曲家の姿勢が反映されていること

台本作家が作った台本に曲をつけてオペラを作るものの、作曲家の姿勢が台本そのものにも大きく反映されている様子が伺えました。

「トスカ」の中の有名なアリア「星は光りぬ」の歌詞についても、台本作家の歌詞が気に入らず、プッチーニが歌詞を書き換えてしまったエピソードが紹介されています。

このあたりも、ヴェルディとの違いが書かれていました。

また、ムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」の部分でも、歴史に対する作曲家本人の姿勢について詳しく書かれていて、興味深く思いました。

オペラを見る楽しみの一つの視点として

「『史実』と言われているもの」それ自体、様々な見方があり、様々な捉え方があるものです。

さらにそれを、劇場で上演する形にしていけば、さらに様々な要素が入ってくることは当然です。

今回、「歴史作品は、題材になっている時代と成立した時代という、二重の歴史を反映していると思う」という筆者の意見に共感しつつ この本を読むことで、オペラを見る楽しみに、また一つ違う視点が持てるようになりました。