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2019.01.17

ルーベンス展を見に行きました

昨日は、久々に上野の国立西洋美術館に行きました。「ルーベンス展」を見るためです。

今年は、行きたい所には行ってみよう、見たいものは見てみよう、というのを目標に入れてみたのです。

ついつい日常の様々な物事にかまけて、美術館にもしばらく行っていなかったので、とても楽しいひとときを過ごすことが出来ました。

子どもへの優しい視線

最初の展示室は、肖像画が展示してありました。有名な自画像もありましたが、私は、ルーベンスが5歳の長女を描いた「クララ・セレーナ・ルーベンス」という画にとても心引かれました。

髪の毛の柔らかい感じ。赤いほほ。ルーベンスは、この子のことが本当にかわいくてたまらないのだろうな、と、その気持ちが伝わってくるような絵でした。

その隣にあった、兄の子供たちをモデルにしたらしいという、「眠るふたりの子供」。幼い子供二人が眠っているところを描いた絵からも、優しさが漂ってくる感じがして、子供への優しい視線が現れていました。

ギリシャ神話の題材の多さ

今回は、ギリシャ神話に題材をとった作品がたくさん展示されていました。

ルーベンスは、フランドル(今のベルギー、フランス)出身ですが、イタリアに行ったこともあります。当時のヨーロッパの文化は、ギリシャ神話の影響が大きかったのだろうと いうことが伺えました。

ルーベンスはイタリア、主にマントヴァに1600年~1608年の間、滞在しました。音楽史のほうでは、同時代1600年に、フィレンツェで現存する最古のオペラも上演されています。それも、ギリシャ神話から題材をとった「エウリディーチェ」でした。

そして、ルーベンスを宮廷画家として雇っていたマントヴァ公の同じ宮廷には、モンテヴェルディが音楽家として仕えていて、ペーリの「エウリディーチェ」と同じ題材の「オルフェオ」を作曲して 1607年に初演しています。

ルーベンスがモンテヴェルディのオペラを見ているかもしれない、面識もあった可能性は高いと思うと、とても興味深く感じられましたし、ギリシャ神話由来の題材で多くの絵が描かれていることも、当時の流れから自然なことなのだろうと思いました。

工房としての制作

ルーベンスは多作でしたが、工房として制作していたからこそ、それだけ多くの作品が描けたのだそうです。

弟子たちが描き、仕上げにルーベンスが手を加える。それで「ルーベンス作」となるのだそうです。

工房の外の画家とも連携し、樹木を描くのが得意な画家に背景の樹木を描いてもらう、等の分業も行っていたのだとか。

そこまでとは思わなかったので、ちょっと驚きました。今とはその辺りの感覚は大きく違うのでしょうね。

美を発見し、表現すること

以前、絵を学んでいた人から、「デッサンでは、そこにあるものの美しさをどれだけ見つけて表現できるか、ということが問われる」という内容のことを聞いたことがあります。

ルーベンスの絵の中からは、人間の身体の美しさが伝わってきました。肌のなめらかさ、筋肉の動き、身体の厚みなど。

宗教画のキリストの死を扱ったものなどからは、逆に生命の失われてしまった身体の痛々しさと、周囲にいた者の悲しみが伝わってきました。

「表現」は様々な要素を含んだ言葉ではありますが、このあたりは、音楽とも深く関わっています。その様々な要素を自分の中に蓄積していく、という意味でも、またいろいろな絵にも、音楽にも触れていきたい、と改めて感じたひとときでもありました。