小・中学生のレッスン

曲のイメージをつかむ

題名のついている曲の場合、題名からイメージをつかんでいくのも、曲を作り上げていく上で大切になっていきます。

絵を描く

1人の生徒さんはギロックの「おばけのあしあと」という曲を練習中です。ちょっと不気味な感じのする曲です。

英語での原題は”Spooky Footsteps”となっています。辞書では、spooky=不気味なとありましたが、「化け物」「おばけ」のような不気味さを表現する言葉です。

どんなイメージで弾いたら良いかな?と質問しようと思っていました。「日本のおばけには足がないよね。このおばけには足があるんだね。」と話してみると、「絵を描きたい」とのこと。

紙と鉛筆を出して、描いてもらうと、ハロウィーンのおばけを描きはじめました。ハロウィーンが身近になっているので、こういうイメージがすぐ浮かぶのですね。

不気味なおばけ、暗さ、家と火の玉などが描かれていたので、イメージはしっかり把握できているようです。

写真を見る

別の生徒さんも同じギロック作曲の「フランス人形」という曲を練習中です。

原題は”French Doll”となっています。調べてみたのですが、アメリカでの「フランス人形」立ちは違うものの、日本のフランス人形のイメージに近いように思います。

「『フランス人形』って知っている?」と聞いたところ、「知らない」というので、写真をいくつか見せました。

「かわいい~!」という反応。確かに、フワフワのドレス、巻いた髪の毛…とてもかわいいですね。

このお人形さんの感じで弾いていこうね、ということで、練習。今は両手の練習なので、このあと、ペダルがついていけば、イメージに近づけるでしょう。

自分なりのイメージを作っていく

曲を表現していく上で、自分なりのイメージを作っていくことは、とても大切です。

写真を見る、絵を描く、言葉で話す、さまざまな要素を使って自分の中で曲のイメージを作っていきます。

それがはっきりすることで、自分の中にある、「こう弾きたい」がより具体的になっていきます。

「先生がこう弾きなさい」と言ったから…ではなくて、自分で感じた「こう弾きたい」を表現していく。それを目指して、曲作りをしていきます。

「うたあそび」は楽しい

幼稚園~小学生の生徒さんには「うたあそび」を使っています。これがとても楽しくて、生徒さんも楽しみにしています。

生徒さんがよく知っている「歌」で楽しむ

おもしろいと思うのは、みんな、一曲終わると、「次は何かな?」と自分で楽譜のページをめくって「次は森のくまさんだ」「つぎはこぶたぬきつねこだ」と確認して、付箋をはっていくのです。

「うたあそび」は「たのしいソルフェージュ」とついているように、読譜やリズムのテキストです。

見開き2ページで1組になっていて、左側のページには、歌が、右側のページには歌に合わせて踊ったり、手遊びをしたり、リズム打ちをしたり、という課題が載っています。

知っている曲に合わせて、いっしょに歌ったり踊ったり、手遊びをしたり、と私もいっしょに楽しんでいます。

先日も、「げんこつやまのたぬきさん」の最後、「またあした」のところでじゃんけんをしたのですが、なかなか勝負がつかずに、大笑いしました。

読譜とリズムうち

そうやって、リラックスした雰囲気の中で、「この音符を読んでみよう」とか、「リズム打ちをしてみよう」と右ページの課題をすると、楽しく取り組むことができます。

リズム打ちも、歌に合わせてリズムをたたいたり(だいたい太鼓を使いますが、時にはタンバリンやカスタネットも使います)、音符のカードがあったりと、パターンもいろいろ。

読譜も「おおきなこえでよんでみよう」と読むこともありますし、時に「うたってみよう」となっていたり、「ピアノでひいてみよう」となっていたり、いろいろなバリエーションがあります。

時々「時間がないから…。」と、踊りだけ踊って課題を省略しようとすると、「先生、これは?」と催促されて、音符を読んだり、ピアノで弾いたりすることもあります。

慣れていくことが大切

「うたあそび」のおかげで、音符を読んだり、リズムが取ったり、ということがスムーズにできるようになっていくと実感しています。

以前、知人と話した時に、その人も、ご主人も、息子さんもピアノを習ったことがあるのですが、「楽譜を見ながら弾くのは私だけ。『見ながら弾く』のは特殊能力だと言われたの。」と言っていました。

でも、私の教室の生徒さんたちは、楽譜を見ながら弾けています。「特殊能力」ではなくて、そこの情報を得ながら弾くことが当たり前になっているからです。

やはり、ピアノの基本の1つとして、「楽譜を読むこと」に慣れることは上達に欠かせません。そして、そのためには、ソルフェージュの力を高めていくことはとても大切です。

歌ったり踊ったりして、いっしょに楽しみながら、ソルフェージュのちからを高めていきます。

空間の音を聞く

先日の調律の時に、「いつも、ピアノのふたはどんな状態で弾いていますか?」と聞かれ、「半開です。」と答えました。

「全開だと、響きすぎるような気がして…。」と言ったのですが、調律時に全開にして、その後、そのまま弾いてみたら、このほうが響きがよく分かって、しかも音が大きすぎるというわけでもありません。

そこで、練習やレッスンの時にも全開にすることにしました。

左右のバランスを聴き分ける

昨日のレッスンで、小学生の生徒さんの演奏を聴いていて、「低音が大きいな。」と感じました。

自分の手の感覚と、直接出てくる音を聴いているとそうなりがちです。

ちょうどピアノのふたは全開です。その先に私が立って、「このあたりの音を聴く気持ちで弾いていみて。」と言いました。

小学校1年生ですが、その感じをつかめたのでしょう。音が変わってきました。左右のバランスが良くなってきたのです。

手の感覚だけでは、左右のバランスを本当にとらえることは難しいです。ちょっとした違いを修正することも難しいのですね。それが、空間に広がる音に注意を向けることで変わってきます。

姿勢が変わった

その後に来た中学生。やはり、右手の音よりも左手の音のほうが大きく聴こえます。

同じように、「ここの音を意識して聴いてみて。」と全開になっているふたの先に立ちました。

今度も明らかに音が変わってきました。左右のバランスが取れて、メロディーが心地よく聴こえます。

弾いた後、生徒さん本人が「そこの音を聴こうと思ったら、背中が伸びました。」と言いました。

以前にも、その生徒さんのお母様から、「姿勢が悪くて、時々言っているのですが、なかなか直らなくて。」というお話を伺ったことがありました。

「姿勢を直す」のではなくて、「自分の弾く音の先を聴き取ろうとする」「空間に自分の音がどう広がっているのか聴こうとする」ということで、姿勢が自然に変わっていったのです。

空間の広がりを意識する

音を聴く時に、漠然とではなく、空間のこの部分の音を聴こうと思う、と意識を変えることで、いろいろな身体の部分が調整されていくということがわかりました。手元のタッチから、姿勢まで、さまざまな要素があります。

実際に、ホール等で演奏する時には、さらに大きな空間、さらに広がりにある空間を意識していくことになります。

レッスン室の中であっても、あるいは練習の段階であっても、その空間の広がりについて意識を持てるかどうか、ということはとても大切です。

ふたを全開にすることで、生徒さん自身の中でも意識が変わっていき、演奏が変わっていく。

調律師さんのアドバイスでふたを全開にしたことで、生徒さんたちにも思わぬ良い影響があり、うれしくなりました。

これ、簡単だよ!

発表会の曲を決める時には、3ヶ月先には到達していてほしいというところを考えながら候補を選びました。

ですから、5月の曲を決めた時には、少し背伸びの状態でもあるわけです。ちょうど、片手ずつ交互に弾く段階が終わり、両手で弾く段階に入ったばかりの生徒さんが多かったため、特にそれを感じていました。

片手ずつにするか両手にするか

5月にちょうど片手ずつ交互に弾く段階が終わった、という小学校2年生の生徒さんがいました。

「連弾にする?少し頑張って両手で1人で弾く?」と生徒さん本人に聞いたところ、ちょっと迷って決めかねている様子。

お母様が、「頑張って両手で弾こうよ。」と背中を押してくれて、両手で弾くことに決めました。

1曲は「こいぬのマーチ」。これは去年、学校の音楽の時間に鍵盤ハーモニカで練習していて、右手はすぐに弾けます。これなら、左手と両手で合わせる練習に時間をかけることができます。

実際に、右手はすぐに弾けました。左手も、すぐに弾けるようになりました。両手で合わせる段階です。

1週間、お家で練習してきて、両手で弾けるようになっていました。お母様が「1小節ずつやりました。1小節できたら、次とつなげる、という感じで。」とサポートをしっかりしてくださったそうです。

弾けるようになったらスムーズに

2曲めは「ちょうちょう」。前回のレッスンで、右手の練習をしてくることになっていました。

今回のレッスン。張り切って教室に入り、右手で「ちょうちょう」を弾きました。上手に弾けています。

では、ということで、左手の練習。こちらも、「こいぬのマーチ」のパターンと似ているので、すぐできました。

両手で合わせていきます。最初の2小節くらいは何回かくり返しましたが、そこから先はスムーズに進みました。

「これ、簡単だよ。」とのこと。練習をして、できるようになり、さらにできることが広がっていきます。

お家での練習も頑張っている

お母様が「なんか、張り切っていて、昨日も何回も弾いていたんですよね。」とおっしゃっていました。

両手で弾き始める最初の段階は、やはりステップとして大きいのですが、そのステップを乗り越えられました。

張り切って練習しているので、レッスンでも積極的です。その場でのくり返しの練習も集中してできています。

発表会をきっかけに、練習そのものも、とても良い流れになり、ぐんと成長することができました。この後、どう仕上げていけるか、とても楽しみです。

離れた音に跳ぶとき

レッスンで「どこが弾きにくい?」「難しいところがある?」と聞くように心がけています。

昨日のレッスンでは、2人の生徒さんから「離れた音に跳ぶのが難しい」という話がありました。

ゆっくり確実になるまで練習する

最初の生徒さんの場合は、3拍子の伴奏の部分です。左手が低いソ→ファソシ→ファソシとなっています。その最初のソからファソシに跳ぶ部分が難しく感じるのだそうです。

確かに最初のソと次のファソシでは1オクターブ以上跳びます。特に手の小さなお子さんにとっては、大変に感じるでしょう。

まず、とてもゆっくり練習してみます。ソ→ファソシだけ取り出します。何回か練習しているうちにこの部分の移動は確実になってきました。

次にソの前のラドの和音も入れて、ラド→低いソ→ファソシという動きの練習をしました。

それも何回か練習して上手に出来たら、2小節分、レ→ラド→ラド→低いソ→ファソシ→ファソシの練習です。

「お家でもここだけ練習しようね。」と言うと「10回くらいかなあ?」と言うので、「最初は10回くらい練習したほうが良いかもしれないね。」と返事をしました。

「スイミングのある日は、5回でも良い?」と言うので、「できるようになったら5回でも大丈夫。スイミングのある日までには、できるようになるから大丈夫。」

きっと次回までには上手に弾けるようになっているでしょう。

指遣いをしっかり決める

次の生徒さんは左手の低い加線のド~低いドまで跳ぶ音程です。リピート記号直前の最後の音が低い加線のドで、戻った最初の音が1オクターブ上の低いドになります。

この場合、最初の小節に戻ると、ド→ソ→低い加線のソ→ソというように、左手の伴奏が続くので、その部分まで考えていく必要があります。

最初の小節に戻った時の指遣いを考えることにしました。楽譜には3→1→5→1となっていて、レッスンでもその指遣いで譜読みをしたのですが、練習しているうちに5 →1→5→1 と変わっていたのです。

「どうする? 3→1→5→1 なら跳ぶ距離は短いよね。 5 →1→5→1は練習して慣れている。 弾きやすいほうで良いと思うけど、決めたら、それでしっかり練習していくんだよ。」と言うと「楽譜通り 3→1→5→1 にする。」という返事。

では、ということで、やはり取り出して「低い加線のド→低いド」のゆっくりの練習をして、できるようになったら、2小節分をまた練習しました。

どうしたいか?を自分で考える

「弾きにくい部分を自分で意識する」ということは、主体的にレッスンを受けることにもつながります。

自分がどうしていきたいのか、という自分自身の演奏の将来像を考えることにもつながります。

昨日の生徒さんたちは、その部分をしっかり意識することができていました。ゆっくりの練習にも頑張って取り組みました。

二人とも次回はさらに上手になっていることでしょう。楽しみです。

自分の音をよく聴く

発表会の曲のレッスンが続いています。それぞれの生徒さんが、自分のペースで練習しています。

1人2曲選んでいるのですが、多くの生徒さんは、1曲めの譜読みが終わり、2曲めの譜読みを始めています。

pppを弾き分けていく

グルリットの「こもりうた」を練習中の生徒さんがいます。この曲はpで始まり、8小節続きます。次にppになります。

一番強いところでもmfです。「こもりうた」なので、やさしく、穏やかな雰囲気が続きます。

弱い音というのは、強い音を弾くよりも、逆に難しいです。特に、小さな生徒さんは、「弾くこと」そのものに力を注ぐので、ついつい大きな音を出しがちです。

昨日の生徒さん、 p の出だしがとてもきれいにできました。弱い音で始められています。ただ、この音量だと、 pp になった時、どうなるかな?とちょっと気になりながら聴いていました。

3段目になった時、さらに小さな音になり、 pp で弾いていました。しっかり音量のコントロールができるように、よく聴きながら練習してきたのです。

小指と親指 ・ 左右のバランス

「今度は、次の段階だから、もっと細かい部分の話をするね。」ということで、レッスンでは、小指と親指の音量と、左右のバランスの練習をしました。

3拍子の曲ですが、左手の1拍目は5の小指で、2拍目と3拍目は親指で弾きます。どうしても親指のほうが力が強いので、1拍目よりも2・3拍目のほうが強く聞こえます。

よく聴きながらドソソミソソのド・ソが強くなるように、小指で弾く音が強くなるように練習をしました。最初は聴き分けながら弾くことが難しかったようですが、何回かやっているうちに、だんだんできるようになってきました。

次は左右のバランスです。右手は付点2分音符、左手は4分音符なので、左右で同じくらいの強さで弾くと結果的には左が強く聴こえてしまいます。

その練習も「よく聴いてね。」と言いながら、何回かくり返しました。だんだん聴き取れるようになってきました。

意識して聴く

「弾く」ことだけに意識をむけるのではなく、聴くことにも意識を向け、弾きながら聴くことができると、自分の演奏を客観的にとらえることができるようになります。

それは、練習の質を高めることにつながっていきます。「間違えずに弾けるかどうか」という部分だけでなく、「どんな音を出しているか」「自分はどんな演奏をしているのか」ということに気持ちを向けることができるようになっていくからです。

小さいうちから、自分の音を聴きながら練習する習慣をつけることで、練習の質が高まり、結果的に本番の曲の仕上がりも変わっていくのです。

これも、自然に身につくものではありません。「聴こう」と意識して練習をくり返していくことで身につくものです。「意識して聴く」習慣、大切にレッスンしていきます。

ペダルの練習

ピアノは、両手で弾くだけではありません。足を使ってペダルも踏みます。慣れるまでは、難しく感じるかもしれません。

でも、ペダルを踏んだ時のピアノの響きはとても魅力的です。美しく混ざりあった響きを感じる上でも、ペダルはとても大切です。

早い段階からペダルの練習をする

私が子供の頃は、ペダルを使うのはずっと後になってからでした。幼稚園の年長からピアノを始めましたが、確か、小学校3年生くらい、ソナチネを弾くようになってからです。

私は小柄だったので、3年生でも、足がペダルに届かなくて、補助ペダルを買ってもらい、それを使った記憶があります。

今は、比較的早い段階からペダルの練習をします。これは、ロマン派や近現代の曲を小さいうちから弾くようになったことと関係しているでしょう。

今、ペダルの練習に入ったところの生徒さんがいます。小学校1年生になったところです。

お母様が、今の「ピアノひけるよ!シニア2」に入った時、「もう、ペダルの練習が出てくるのですね。」と言って、早めに補助ペダルを探して用意してくれました。

ですから、ペダルの練習を楽しみに待っていたのです。ちょうど発表会の曲に入る直前に、ペダルのところまできたので、「発表会ではペダルのある曲が弾きたい。」とのことでした。

小さい子どもさんにとっては力が必要

ペダルを踏むと1.5センチくらい下がります。大人なら、大したことがなくても、小さい足ではかかとをつけて1.5センチ押し下げるのは大変です。

初めてレッスンでやってみた時には、力を入れて一生懸命、踏んでいても、一番下まで下げることが難しいくらいでした。

何週間か練習しているうちに、これくらいの力で踏めば大丈夫、というのは分かってきたようです。

それでも、ペダルを踏む時には、前かがみになって力いっぱい踏んでいる様子がよく分かります。

お家で練習している時、足の裏が痛くなったそうで、「靴をはいて踏んでいる」とのことでしたので、次回からは、ここでも靴を持ってきてもらうことにしました。

まずは2つずつから

両手に足もつける、ということは、3つのことを同時にすることになります。ですから、2つずつの練習しようね、という話をしました。

片手ずつの練習をした後、2つずつの組み合わせで練習をしていきます。①右手と左手②右手+右足のペダル③左手+右足のペダルとなります。

それが出来て最後に右手+左手+右足のペダルです。

本人も「なるほど」という感じで聞いていましたし、実際にそのように練習したようです。今回のレッスンでは、ずいぶんスムーズに踏めるようになっていました。

慣れてくると、自然に踏めるようになっていきますが、やはり最初はちょっと大変。でも、響きの美しさと、「ペダルが踏めてカッコいい」という気持ちもあって、頑張って練習している様子をほほえましく思いました。

ピアノを始めてから自信が出てきたようです

先日、新しく入会して2ヶ月が過ぎた生徒さんのお祖母様にお会いする機会がありました。

そこでお孫さんのピアノの話題にもなり、「ピアノを始めてから、自信がついてきた感じがします。以前は、できるだけ目立たないように、後ろに後ろに…という感じだったのですが、少し変わってきました。もっと早く習わせてあげれば良かった、と思いました。」と嬉しい言葉をいただきました。

ピアノは個人レッスンです。その生徒さんに合わせて、教材を考え、教え方も工夫していきます。特に、お子さんの場合、年齢と性格の両方で一つ一つの物事への反応の差が大きいです。今回は、主に子どもの生徒さんについて、書いていきます。

個人レッスンの工夫―手作りの音符カード

例えば、五線の上に音符が書いてあります。その一つ一つの音符には、五線の上のどこに書いてあるか、によって、ドレミファソという音の高さについての情報と、4分音符、2分音符などの音符の種類によって音を伸ばす長さについての情報と、2種類が含まれます。

最初のうち、この2種類がなかなかわからない場合も多いのです。最初にドを4分音符で覚えてしまうと、4分音符は他の音で書かれてあっても、すべてドだと思ってしまう、というように。

生徒さんの中にも、そういうお子さんがいたので、今、教本で出てきたドレミファそれぞれについて、全音符・2分音符・4分音符のカードを作りました。

それを使って、ドはどれ?レは?というように、まず、どの種類の音符であっても、五線の上の位置によってドレミファソが決まることを学ぶ機会を作りました。

次に、同じカードを使って、4分音符を探してみよう、2分音符を探してみよう、など、音符の種類を区別する練習をしました。

まだ完璧というわけにはいきませんが、その生徒さんもだんだん分かってきました。

個人レッスンの工夫―レッスンの組み立て

レッスンの組み立てについても、生徒さんによって変えています。生徒さんによっては、「『うたあそび』は最後が良い」というように、リクエストが来る場合もあります。そういうときは、できるだけ希望に沿うようにします。

例えば、タッチに課題のある生徒さんの場合には、紙の指人形を使った体操に時間を取ります。

指の付け根から曲げる練習、指の付け根と手のひらの指に近い部分の筋肉を鍛える体操。それを時間をかけておこなったりもします。

録音をし、自己評価を中心にレッスンを組み立てていく場合もありあす。

バリエーションを増やす

いろいろな生徒さんがいます。それぞれ、個性があります。それぞれの得意なもの、好きなものをできるだけ伸ばせるように。同時に苦手なものにも、少しずつ取り組めるように、といろいろ考えながらレッスンをしていきます。

その積み重ねが自信につながっていきます。毎日少しずつではあっても、積み重ねていけば、とても大きな力になります。だからこそ、取り組みやすいように、頑張れるように、と思うのです。

そのためのも、さまざまな面について、バリエーションを増やすように日頃から心がけています。せっかく始めたピアノ。ぜひ、楽しく、長く続けて弾いてほしい、日々そんな思いでレッスンをしています。

ピアノが楽しい

小学校1年生の生徒さん、うれしいことに「ピアノが楽しい」と言ってくれています。

両手で弾けるようになり、発表会で演奏する曲として、ギロックの「パリの花売り少女」というすてきな曲を選びました。

曲の力

発表会の曲に入る前は、ちょうど両手で弾き始めた段階。右手でメロディーを、左手でドソドソのように簡単な伴奏をつける曲を練習していました。

「パリの花売り少女」はそれに比べるとずっと複雑です。最初の部分は左手がメロディーを、右手が伴奏をつけています。

でも、その分、とてもおしゃれな感じです。「パリの」という言葉がついているように、華やかな、でも落ち着いた、歴史を感じさせる都市で花を売っている少女の姿が浮かんでくるようです。

候補で私が弾いたのを聞いた時、迷わず、「この曲が良い。」と即答でした。

それまで弾いていた曲よりは難しいのですが、気に入った曲を弾けるということが頑張って練習する力になっています。

進歩が実感できている

春頃から練習記録のシールを使っています。楽譜に貼って、練習したら色をぬるようにしたところ、毎日の練習量が増えました。

ですから、この春から上達が速くなり、レッスンについてきたお母様が、「私は仕事で練習を見られなくて、今回の宿題は、今始めて聞いたのですが、自分でこんなに弾けるように頑張ったのですね。」とおっしゃることが増えてきました。

生徒さん本人もそれは実感できていたようです。

今回の曲についても、お母様に「両手で弾けてうれしい。」と言っていたそうですし、練習の記録を見ても、毎日、しっかり練習している様子が伺えます。

練習する力がついてくると、いろいろな面でプラスの効果が出てきます。今、その状況になっているのですね。

楽しく、力をつけていく

音楽は「音」を「楽しむ」こと。自分の表現ができるようになって、それを楽しむこと。

でも、その土台となる練習が欠かせません。練習することで、力がついていきます。いかに楽しく、力をつけていけるか。

今回は、長い曲を「美しく」演奏するのが目標です。この「パリの花売り少女」を、どんなふうに仕上げていけるのか、レッスンをしている私も、これからがとても楽しみです。

粘り強く取り組んでできるようになる

ピアノを習って身につく力は、「ピアノの演奏をする力」だけではありません。1つの物事ができるようになるまで「粘り強く取り組む力」もあります。

先日のレッスンで、それを改めて強く実感しました。

左右別々に動くから難しい

「ピアノひけるよ!ジュニア3」にある「メリーさんのひつじ」は右手と左手のリズムが違うので、ちょっと難しく感じる生徒さんが多いようです。

この部分です。

右手が付点4分音符で左手が4分音符。2拍目は左手だけ動き、すぐ右手が動き、そしてまた両手で3拍目を弾く。

ある小学校1年生の生徒さん。この部分でとても苦労しました。

リズム打ちもたくさん練習しました。リズム打ちは、指を動かさないので、できるようになっています。頭では理解しているのですね。

ところが、ピアノに向かうと左手はドソドソと違う指を動かすなくてはなりません。そうすると、右手につられて左手も付点4分音符のリズムになってしまったり、逆に左手につられて右手が4分音符のリズムになってしまったり。

粘り強く練習

前回のレッスンでも、ここはたくさん練習して帰りました。最後にできるようになったので、大丈夫かな?と思っていました。

ところが、今回のレッスンで実際に弾いているのを聞くと、左手が右手と同じリズムになってしまっていました。

もう一度、練習です。右手だけ。左手だけ。とてもとてもゆっくり両手で練習。それでも、なかなかできません。今度は右手が4分音符になってしまいます。

ほんとうに何回も練習しました。感心したのは、泣きもせず、いやがりもせず、できるまで粘り強く何回も何回も弾いていたことです。

何回練習したかは分かりません。でも、できるようになりました!

次の曲ではすぐに弾けた

次の「よろこびのうた」にも同じパターンが出てきます。右手と左手のそれぞれを私と一緒に弾いた後、この「右手が付点4分音符+8分音符、左手が4分音符+8分音符」が出てくる小節だけ練習しました。

今度は、2回弾いただけで、すぐできるようになりました。苦労して練習したかいがありました。

確実に理解して、自分自身のものにすることができたのです。

ピアノを通して「粘り強く取り組む力」をつける

とても真面目で一生懸命な生徒さんの姿に、私も感心しました。ピアノが大好きで、今までにも「上手になりたい」「弾けるようになりたい」という気持ちが、伝わってくるような言動がたくさんありました。

その「上手になりたい」という気持ちがあるからこそ、今回のような練習にも粘り強く取り組めたのでしょう。

日頃の練習に、地道に取り組み、その中で「練習すれば上手になる」という見通しを、自分なりに持つことがでる。

ピアノを通してそんな思い、そしてそれを行動にした時の「粘り強く取り組む力」がついてきたことにとてもうれしく思いました。