ピアノ教室

2019.07.20

緊張との付き合い方

先日から、緊張をコントロールするための準備について、生徒さんにお伝えしているところです。

反応もそれぞれですが、いろいろな今までのエピソードも聞くことができました。

すごくドキドキする

「遠足の感想発表のときに、ドキドキして、緊張しすぎて、泣いちゃったことがある。」と話してくれた生徒さん。

いつも前向きに頑張って練習していて、とてもしっかりしているので、ちょっとびっくりしました。

「今回は、感想発表と違って、前もって準備できることだから、しっかり準備できているから大丈夫。」と話しました。

「深呼吸は学校で練習している。」という話もしていたので、ちょっとやってみました。5秒かけて鼻から吸って、は良かったのですが、15秒かけて口から吐いて…のところで、どんどん吐いてしまって「ながい!!」

「でも、まだあと5秒かけて全部息を吐くんだけど…。」と言うと、「もう息がない」ということで、どんどん吐きすぎていたことがわかりました。

「じゃあ、練習しておこうね。」と話しました。

ポジティブワード、これいつもやっている

別の生徒さん。もう中学生ですが、本人も「私は本番に強いから。」と言い、お母様も「この子は本番に強いんですよね。」と言っています。

プリントにしたものにさっと目を通して、「私、これいつもやっている。」と言ったのが「ポジティブワードを言う」というもの。

「弱気になるとだめなんですよね。だから、いつも『できる』って思うようにしている。」とのことでした。

心の中でどんな言葉を言っているか、自分自身の状態に与える影響は大きいようです。

発表会をきっかけに学ぶ

小中学生の生徒さんにとって、これからも緊張する場面はたくさんあるでしょう。その時に、先ほど紹介した生徒さんのように「私は本番に強い」と思えるというのは、とても大きな力になっていきます。

発表会という場をきっかけに、緊張のコントロール法を学び、「本番に強い」と思える自信をつけていく。

ここにも、ピアノを学ぶことの大きな意味があると考えています。

2019.07.18

いい緊張は能力を2倍にする

発表会が近づいてきたので、緊張についてのコントロール法を生徒さんにお伝えしています。

「いい緊張は能力を2倍にする」という、精神科の医師でもあり、Youtubeやメルマガ等で積極的な情報発信をしている樺沢紫苑氏の書いた本がとても参考になったので、ここでもご紹介します。

この本の内容から選んで生徒さんに紹介した理由は、科学的な根拠に基づいた緊張対処法が書かれていること。それをもとに、準備することでより良い演奏ができるように、と考えたからです。

緊張とはどういう状態か

まず、緊張とはどういう状態であるか、という説明がしっかり書かれています。

「緊張は味方である」と言い切り、「緊張はパフォーマンスを高める」ということを知っているだけで、数学の試験の結果が有意に得点が高かった、というハーバード大学の実験の結果を紹介しています。このように根拠がしっかりしているので、説得力があります。

そして、パフォーマンスを下げる「過緊張」(頭が真っ白になる等)という状態を「よい緊張」にするための対処法が具体的に書いてあるのです。

緊張は「交感神経が優位」「セロトニンが低い」「ノルアドレナリンが高い」状態である、と説明。私自身、この記述を読んで、緊張の原因はたった3つであることに、正直、驚きました。

また、このように具体的な脳の状態を知ることができるからこそ、具体的に過緊張への対処法も考えることができるのです。

「交感神経が優位」なときは、交感神経にブレーキをかける「副交感神経を優位」にすればいい。「セロトニンが低い」のであれば、セロトニンを高めればいい。「ノルアドレナリンが高い」ときは、ノルアドレナリンを下げればいい。

樺沢紫苑 いい緊張は能力を2倍にする 文響社 p.42

事前の準備が大切

もう一つ、この本で印象的だったのは、事前準備の大切さを言っていることです。事前準備がしっかりできているからこそ、本番での緊張のコントロールもしっかりできる。

練習がしっかりできているときの本番は、確かに安心して演奏ができます。これは、あくまでも体験的なものでしたが、この本を読んで、裏付けがよく理解できました。

具体的な方法は33、紹介されています。

深呼吸一つとっても、1分間で3回の深呼吸をする方法について、1 5秒で鼻から息を吸う→2 10秒かけて口から息を吐く→3 さらに5秒かけて、肺にある空気を全て吐ききる というように、時間と方法を示し、誰でもできるように分かりやすい記述になっています。

今までの「緊張本」や「あがり症本」は、本番での対策がメインに書かれていたようにおもいますが、「それは対症療法」としては正しいものの、「根治療法」にはならないのです。本書でお伝えした内容は、あなたの「緊張しやすい性格」や「あがり症」を根本的に直す方法です。そのための事前トレーニングです。(中略)緊張するかどうかは「前日までに9割決まる」のです。

樺沢紫苑 いい緊張は能力を2倍にする 文響社  p.244~245

緊張感を上手に活用していく

ピアノの練習をするとともに、緊張のコントロール法についての知識と対処法を知って準備を進めていくことで、より自分らしい演奏につなげることができます。

最後に、発表会そのものについての直接の記述があったので、そこをご紹介します。「目的にフォーカスする」という部分での記述です。

演奏会、発表会の目的は、間違えないで完璧に演奏することではなくて、お客さんが楽しんでくれたり、お客さんが感動してくださるということではないですか?(中略)言い換えると「間違えないで演奏する」は「あなたの目的」であり、「演奏を楽しみたい」が「お客さんの目的」です。(中略)あなたが最終的な達成すべき目的は何か?その目的にのみフォーカスして、余計なことは考えない。

樺沢紫苑 いい緊張は能力を2倍にする 文響社  p.233~234

まず、ピアノそのものの練習をしっかりしていく。そのうえで、緊張への対処法も事前に練習しておく。さらに、目的にフォーカスしていく。

準備段階の大切さを改めて考えつつ、生徒さんの本番に備えていきます。

2019.07.15

前向きなエネルギー

年齢に関係なく、自分の目標に向けて努力している人は、前向きのエネルギーを感じます。

生徒さんとのレッスンで、そのエネルギーをたくさん感じることができます。

年中さんの元気なエネルギー

幼稚園年中の生徒さん。ここのところで、音符も読めるようになり、リズムも分かり、いろいろなことをどんどん吸収しながら、成長しています。

七夕の短冊に「ピアノがじょうずになりますように」と書いたのだそうで、とても前向き。

先日のレッスンでも、にこにこしながら来て、音楽ワークの○つけをして、次の宿題の説明をして…その後に、「ピアノ、聞かせてね。」と言うと「やった!」とすぐピアノに移動。

「アルプスいちまんじゃく、弾けるようになったんだ。」と言って楽しそうに弾いてくれました。

音楽を楽しんでいる姿。できるようになったことを、自分自身がとても喜んでいる姿。ほんとうにかわいいし、前向きのエネルギーにあふれています。

次の「きらきらぼし」も、音符が読めるので、まず、一緒に歌ってみました。最初、2分音符をのばさずに、次にいってしまい、「そうだ、ここのばすんだ。」と自分で気がついてすぐ修正。

最後まで、階名で歌いきり、すぐピアノで練習しました。

次の「ゆかいなまきば」は、ぱっと見ると、今までよりも長いので「難しそう。」と言っていましたが、階名で歌ってみると、「ド」が続くことが分かり、「簡単だね。」ということで、こちらもすぐにピアノで練習を始めました。

中学生の知的で前向きなエネルギー

中学生の生徒さんも前向きです。中学1年生の生徒さんは、学校の勉強、部活動に、塾にと多忙な生活を送っています。

今度、クラスの合唱の伴奏オーディションにチャレンジしたいということで、楽譜を持ってきました。

発表会もあるけれど、こちらの譜読みも始めたいとのことで、やはりここでも積極的な、前向きなエネルギーがたくさん。

別な中学生の生徒さんは、去年からピアノを始めました。とても知的好奇心が旺盛で、「これはどうしてですか?」とか「これはどんな意味ですか?」とか、「この曲の練習のポイントはなんですか?」と疑問に思うことを聞いて理解しようとしています。

小さなことの積み重ねが大きな力になる

小さなことでも、自分で「これをしよう」と行動を選んで実行する。その積み重ねが大きな成果につながっていきます。

一つはそのものの進歩として。ピアノで言えば、音符が読めるようになった、とか、この曲が弾けた、というのがそれにあたります。

もう一つ大きいのは、「やろうとしたことができるようになる」体験を通して「やればできる自分」というのを意識できるようになることです。

自己肯定感につながるこの感覚、ピアノで養うことができます。そして、これは、とても大きいことです。

小さなお子さんの姿を見、中学生を見ると、「こういうふうに成長していくんだな」ということがとてもよく分かります。

そして、私自身も進歩していく前向きな力を生徒さんたちが感じられる自分でありたいと思っています。

2019.07.14

それぞれのペースでそれぞれのゴールを目指す

ピアノを習いたい目的は人によってさまざまです。ゴールもさまざま。それぞれのペースでそれぞれのゴールを目指していくことを大切に考えています。

発表会に出ることも、大きなチャレンジです。その一つのゴールに向けてのプロセスも人によって違います。

緊張しますね。チャレンジです。

大人の初心者の生徒さんも、今回参加されます。先日のレッスンで、ご自分のパートが上手に弾けていたので、私と合わせる練習を始めました。

隣に人がいて、自分が弾く音以外の音が聴こえてくる。その中で、連弾のもう1人の音も聞きながら、自分のパートを弾いていくこと。

簡単そうで、これは難しいことです。しかも、相手のパートのリズムが自分と違うと、拍子の感覚も変わってきます。

その生徒さんも最初は「緊張しますね。」と言いながら、合わせる練習を始めました。

最初は緊張しつつも何回か練習していくうちに、慣れてきます。慣れると自分のパートと相手のパートの音の重なり具合が分かってきます。

そうすると、相手の音を聞きながら、自分の音を出すことに不安がなくなり、だんだん合わせられるようになっていくのです。

だんだん練習していくうちに、合うようになりました。「自分としても、今回、人前で弾くなんて、チャレンジですけど、やってみようと思って。」とおっしゃっていました。

自分の成長の節目として

私自身のことを思い出しても、「小学校○年生の時に、あの曲を弾いて…」ということは、よく覚えています。

大人になって再開してからも、「あの時はドビュッシーを弾いた」とか「ブラームスだった」とか、発表会や、定期演奏会など、ステージで弾いた曲はよく覚えています。

自分にとっての節目になり、そこへのプロセスもあるからこそ、記憶にしっかりとどまるのでしょう。

今回の発表会が、生徒の皆さんにとって、成長の節目として記憶にとどまるものであるということを意識して、レッスンしています。

かえるは5匹!

昨日の「曲のイメージを考える」の続きになりますが、お話を考えたり、どんな景色を曲にしたりしたのかを、いっしょに考えていいます。

いろいろな風景が眼の前に描き出されてきて、話を聞いているととても楽しくなりました。

大きいかえると、小さいかえる

「かえるの行進」という曲を弾いている生徒さん。小学校2年生です。

「どんなかえるなの?行進、ていうけど何匹くらいいるの?」と聞くと、元気よく、「かえるは緑だよ。大きいかえると中くらいのかえると、小さいかえるがいるんだよ。」とはっきりした返事が返ってきました。

「そうなんだ。」
「強く弾くところは、大きいかえるがぴょん、って跳ぶところ。弱く弾くところは、小さいかえるが跳ぶところ。」

「じゃあここは?」とメゾフォルテの部分を指して聞くと、
「そこは、中くらいのかえる。」

「じゃあ、○○ちゃんの頭の中には、何匹かえるがいるの?」
と聞くと、楽譜を見ながら数え始めました。

「ここに中くらいのかえるがいて、ここにもう1匹いて、ここで大きいかえるで、ここは小さいかえるで、ここに中くらいのかえるがもう1匹。全部で5匹いる。」

「行進」という題名ですから、5匹くらいはいそうですね。話を聞いていて私の頭の中にも、かえるが行進している様子が浮かんできて、とても楽しくなりました。

イメージがはっきりしていているので、それが聴いてくれる人に、より伝わるように、さらに表現の仕方を工夫していきます。強さ、弱さの度合いも考えていきます。

ひなたぼっこをしているのは

「ひなたぼっこ」という曲を選んだ生徒さん。「だれがひなたぼっこしているところなのかな?」と聞くと、「犬!」という返事。

ちょっとびっくりして、「犬?どんな?」と聞くと
「茶色と白の犬。」
とこちらも頭の中に、景色が浮かんでいるようです。

「どんな場所で?」
「中くらいの広さのお庭。犬用のすべり台があるお庭。」

犬用のすべり台は、どこかのドッグランで見たそうです。頭の中に、その時の風景が浮かんでいるのかもしれません。

「じゃあ、そこにいる犬が、どんなふうにひなたぼっこしているのか、お話を考えてみようね。曲がここでこういうふうに変わっているから、犬は動いたのかな?誰か来たのかな?」

昨日は、そこでちょっとつまってしまいました。犬がひなたぼっこしているところが頭に浮かんだのかもしれませんが、途中で曲調が変わっている部分もあります。そこのお話までは、ちょっとすぐには浮かばなかったのでしょう。

次回までに考えてくることになっています。どんなお話が聞けるのか、楽しみです。

想像力をはたらかせて

いろいろな場面を想像していく。想像力をはたらかせて、考えていく (もちろん曲に即して) 。そうすることで曲の変化の様子を、より具体的に表現できるようになります。

昨日書いたピアニストのレッスンでも、歌詞のないピアノ曲の中に、情景を描き、それを表現することを教えてくれていました。

バロックの舞曲では「そこは、王様と女王様がこうやって踊っているところ。」ラフマニノフのピアノ協奏曲の一節について「そこは、亡くなってしまったかつての恋人を思って、叫んでいるところ」というように。

小さいうちから「自分の音楽を表現する」ことを大切に積み上げ、想像力、創造力を培っていきたいと考えています。

2019.07.12

聴く人にイメージを届ける意識を持つ

発表会に向けて、生徒さん一人ひとりが頑張っているところです。だいたい、最後まで弾けるようになってきて、暗譜もできてきました。

この次は、さらにその曲をどのように仕上げていくか?という段階になります。どんな音楽を聴いてもらいたいのでしょうか?

題名から曲全体のイメージを描く

演奏をしていく上で、自分の作りたい音楽のイメージが明確になっていることはとても大切です。

題名を読むと「ああ、なるほど。」と分かりやすい曲もたくさんあります。

例えば、湯山昭作曲「お菓子の世界」の中の「チョコ・バー」。口の中でいろいろな味、食感が弾ける様子がとても分かりやすいです。

「パリの花売り少女」という曲があります。こちらも、「花売り少女」を描いた絵を見たり、パリの風景の写真を見たりしていくと、イメージがわいてきます。

花をかごに入れてたくさん持っている少女が立っているのでしょう。どんな建物が近くにあって、どんな人達が行き来しているでしょうか。

子どもさんが演奏する曲の場合には、題名から、曲全体を考えていくと、イメージがつかみやすいですね。

細かく部分ごとのイメージを考える

今度は細かく部分ごとのイメージを考えていきましょう。

さっきの「チョコ・バー」もそうですね。音楽が変わる部分ごとに、ここは、ナッツかな?ここはシリアル?

チョコ・バーには、マシュマロが入っているものもあるようですね。そこを具体的に考えていくと楽しいかもしれません。

「パリの花売り少女」もそうです。お客さんがお花を買ってくれたでしょうか。それとも、街の中を歩いて、違う景色を見たのでしょうか。

そんなふうに、お話を考えていくと、楽しいかもしれません。

聴く人に届くように

もう一つ大切なことは、聴く人に届くようにするにはどうしたらよいか、ということです。

以前、ある世界で活躍するピアニストのマスタークラスを聴講したことがあるのですが、「聴いている人が分かるように」ということを何度も言っていました。

特に、曲の中で、雰囲気が変わる部分。前とは違う、新しい場面に入るということが聴いている人に伝わるように、ということです。

日頃、自分ひとりで練習して、レッスンに行ってということの繰り返しだと、この「聴く人に届くように、伝わるように」という部分を忘れがちです。

発表会のように、聴く人がいる場で弾くことは、「届ける、伝える」意識を持って演奏できるようになるために、とても良い機会です。

一生懸命練習している生徒さんたち。ぜひ、「届ける」「伝える」気持ちを持てるように、私もレッスンしていきます。

ピアノを楽しむ

せっかく習っているのですから、ピアノを楽しんでほしい、と思っています。「楽しむ」のもいろいろな観点があります。人間は「自分の成長を実感できたとき楽しいと感じる」のだそうです。それも1つです。

自分の好きなジャンルの音楽を弾いてみる、これも楽しさの1つだと思います。特に、大人の趣味の方などはそうですね。

私はクラシックが専門なので、ポピュラー音楽は詳しくはありませんが、生徒さんたちが「弾きたい」と思う曲に触れ、一緒に楽しんでいきたい、という思いがあります。

好きな曲、探してみます

中学3年生の生徒さん。去年から「気分転換に練習して、ピアノが弾けるようになりたい」とのことで来ています。

弾きたい曲がポピュラー曲だったので、教本で新しいリズム、和音にも慣れていけるように、と「ピアノランド」を選び、3巻に入りました。

忙しい日々ですが、勉強の合間に気分転換に練習しているそうで、両手で弾くことにもずいぶん慣れて、スムーズに弾けるようになってきました。

ふとしたタイミングで「教本がどれくらいまで進んだら、好きな曲が弾けるようになりますか?」と質問がありました。

「今でも、曲によっては弾けるものがありますよ。」ということで、いくつか、たとえばこれというように、手元に楽譜があるディズニーやジブリの曲を例に挙げてみました。

ただ、中学校3年生男子には、ちょっと「子供っぽい」かもしれません。どうやら自分なりに弾きたいと思う曲があるらしい。

「これくらいの感じ。右手がこうで、左手の動きの少ないものなら弾けるよ。」と言うと、「探してみます!」と言っていました。

デジタルネイティブ世代ですから、きっと私よりも上手に検索し、自分にとって魅力的な曲を探し出してくるでしょう。どんな曲を持ってくるのか、私自身もそれが楽しみでもあります。

連弾、伴奏がつくときれいですね

もうお一人は、大人の方です。発表会も「出てみます」ということで、今回は連弾での参加です。

ちょっとおもしろい連弾曲を見つけ、それを弾くことにしました。「きらきらぼし」と「パッヘルベルのカノン」を組み合わせてあります。

生徒さんが弾くのは主に「きらきらぼし」。そこにセコンドパートの私が、パッヘルベルのカノンを入れていく、という感じです。

前回のレッスンで、合わせてみました。細かい音符が入ると、だいぶ雰囲気が変わってきます。

終わって「伴奏がつくときれいですね。雰囲気がずいぶん違います。」と言っていました。

これも、「レッスンに来て弾いているから」こその楽しい体験です。

いろいろな楽しみ方がある

音楽にはいろいろな楽しみ方があります。聴くこともとても楽しい。ただ、自分で能動的に関わるとまた違う楽しさが見えてきます。

ピアノが弾けて、自分で実際に音が出せると聴き方も変わってきます。作曲者や演奏者の細かい工夫に、より気づきやすくなり、今までよりも深く味わえるようになることもあります。

一人ひとりの生徒さんの「楽しさ」に寄り添い、その幅を広げていく。レッスンを通してそのお手伝いができたら、それほどうれしいことはありません。

初見で弾く力

ピアノを弾く上で、「自分で楽譜を読む力」はとても大切だと考えています。自分で音を確認できて、リズムも取れる、それができると楽譜にある音楽を、実際の音にしていくことができます。

「うたあそび」の中にも、時々その課題がありますし、レッスンの中でも、音符をドレミで言ってみたり、リズム打ちをしてみたり、初めて見た楽譜を音にしていく活動を入れています。

「あかいかわのたにま」を弾く

先日、3月から来始めて4ヶ月が過ぎた小学生のお子さんのレッスンがありました。発表会にも参加する予定ですし、とても一生懸命練習してきます。

前回、「てをたたきましょう」の後半を自分で弾いてきました。今回は「ピアノひけるよ!ジュニア1」の最終曲、「あかいかわのたにま」です。

この曲は3拍目から始まるのでリズムが難しいと感じる生徒さんも多いです。ですから、先にボンゴでリズム打ちの練習をしました。

右手で弾く部分は右手で、左手で弾く部分は左手でたたきます。何回か練習して、上手にたたけるようになってから、ピアノに移動しました。

音符の階名を確認して、実際に弾いていきます。初めて弾くのに、とてもスムーズに弾けていて、私も驚きました。

生徒さん本人もうれしそうです。その後、「うたあそび」のリズム打ちもしましたが、こちらもとてもスムーズでした。

初見奏の課題を弾く

「うたあそび」にも、初見でピアノを弾く課題が、時々入っています。2年生になった生徒さん、「うたあそび」が大好きで、毎回とても楽しみにしています。

時間によって、課題が2つあっても、1つしかできないこともあるのですが、昨日は少し余裕がありました。

「季節はずれ~」と笑いながら、「ゆき」を歌って踊って楽しみました。その後、「初見の課題をどうしようかな?」とこちらが考えている間もなく、生徒さんが「先生、これ、やってみる。」とのこと。

「じゃあ、弾いてみようか。」ということで、ピアノに移動して、課題を弾いてみました。「ゆき」の中で付点をなくして、4分音符のリズムの音だけを拾い出した楽譜です。

「ソソソミ ミミミド ミードレミードレ ミソレミレ…」

時々つまづくことはありながらも、最後まで弾ききりました。「2回目は歌いながら弾いてみようか。」ということで、いっしょに歌いながら弾きました。

「できた~!」と生徒さん本人も大喜びです。

少しずつでも着実に進歩

1回ずつはほんの少しの違いかもしれませんが、読譜力が着実についていることを感じました。

読譜力があるのとないのとでは、ほんとうに大きな違いになってきます。新しい曲に取り組むときの抵抗感がまったく違います。楽譜が読めれば、新しい曲にいろいろ自分でチャレンジすることもできます。

さらに、小学校の伴奏者オーディション。生徒さんがチャレンジしてきて、よく分かりましたが、楽譜をもらってから、オーディション当日までの期間は意外に短いことが多かったですね。

読譜に自信があれば、こういうものにも積極的にチャレンジすることができます。

少しずつでも着実に進歩できるよう、いろいろな工夫をしていきます。

したい表現ができるようになるためのレッスン

音楽を作っていく上で、「どう感じるか」ということはとても大切です。どんな曲にしていきたいかというイメージを作っていく。

同時に、技術的な側面として、「どうしたらその表現ができるようになるか」ということもとても大切です。

和音の中の一つの音を聴かせたい時

先日、湯山昭「お菓子の世界」の中の「ボンボン」をレッスンしました。この曲は、とてもおしゃれですてきなワルツです。

メロディーは子指で弾く。内声があって、そこを親指と中指で弾く。そんな部分があります。

どうしても、親指と中指のほうが力があるので、子指で弾いているメロディーが聴こえなくなっていました。

「子指の音を意識して聞こえるようにしましょう」では、なかなか聴こえてくるようにはなりません。もちろん、メロディーを意識することは重要な第一段階です。

でも、私自身が受けてきたレッスンを振り返っても、そこで終わっている場合が多かったように思います。

手をどのように使えば、メロディーが浮かび上がるように弾けるのか、ということを示していく必要があります。これがレッスンの重要なポイントです。

手首の位置、手の傾け方、手を鍵盤に入れる時の方向、小指の支えの作り方。こういうことを確認していきます。

歯切れの良い音色にしたい時

同じ「お菓子の世界」の中のチョコバー。こちらでは、フォルテの響かせ方です。メゾピアノから始まり、フォルテまでだんだん強くなっていく。

せっかくですから、同じ音色が並ぶのではなくて、音の色合い、響きも変わっていくと、より魅力的です。

こちらも、手の使い方を話しました。指を伸ばして、支えを意識して斜め奥に入れていく。この手の使い方をすると歯切れの良い響きのフォルテが出ます。

もちろん、肩、肘の使い方も大切です。力がしっかり鍵盤にのるようにします。

自分の引き出しを増やす

私自身の引き出しがどれくらいあるか、ということはレッスンの質に関わってきます。

先日のガブリーロフに一緒に行った、大学時代の先輩でもあり今は同門でもあるピアノの先生も「自分が勉強することで、レッスンが変わったのよ。」と言っていましたが同感です。

どうしたら、自分の持つイメージが表現できるようになるのか?どうしたら、ほしい音が出せるようになるのか?どう手を使ったら弾きやすくなるのか?

それをできるだけ「具体的」に教えることができるようになること、これが大切だと考えて、また私もしっかり勉強していきます。

設計図を書くみたいな感じですね

大人の生徒さん。技術者として、お仕事をなさっている方が、先日のレッスンでこんなことをおっしゃっていました。

芸術は感性が重要だと思っていた

発表会に向けて、とても熱心に練習していらっしゃいました。まだ始めて間もないので、今回は連弾曲ですが、両手の動きのある曲にチャレンジです。

左右1オクターブ違いで同じメロディを演奏する部分の右手ですが、指遣いが良くなかったため、フレーズの途中でポジションを大きく移動することになり、途切れてしまっていました。

いっしょに楽譜を見ながら、「このミは1回めは3の指を使うけれど、2回目は4の指を使って、こう動いていくと途切れません。」とゆっくり確認していきました。

「なるほど。らくに繋がりました。」「指遣いをそれほど意識していませんでしたが、こうやって追っていくと、きちんと弾けるのですね。」

「芸術は感性が重要だと思っていましたが、技術者が設計図を書くみたいなこういう部分があるんですね。」

そうです。もちろん、「感じること」がとても重要であることは間違いありませんが、実は、計画的に行う部分もたくさんあります。

特に指遣いは大切

特に指遣いは大切だと私は考えています。それは、私自身の手が小さいことも理由としてあるかもしれません。

外国版の楽譜の場合、特に多いのですが、「この部分、この指遣いで弾けるの?」と感じることがあります。

また、ゆっくり確実に弾く練習は欠かせませんが、そのときも、指遣いを書き込んであると、常に同じ指遣いで練習することができます。

実は、書き込まずに練習していた時、ゆっくりの練習の時と、テンポを上げて弾いた時の指遣いが違っていて、練習の意味がなかったことがあり、それ以来、指遣いは、最初の段階で書き込むことにしたのです。

レッスンに来ることで分かることがある

「今日、レッスンに来て、どこに問題があるかということと、解決方法がよく分かりました。」と言っていただきました。

同時に、音の出し方をレッスンしている中で、「奥が深いですね。」という感想もおっしゃっていました。

レッスンを始めてから3ヶ月。着実にご自身でも成果を感じています。何よりも、短期間に両手で弾けるようになってきました。

音を楽しむ「音楽」。レッスンに来ることで、近道が分かる部分がたくさんあります。同時に、奥深さを感じる部分もたくさんあります。

だからこそ、楽しい。だからこそ、ずっと続けられるのだと思います。

「一生の趣味にしていきたいです。」とおっしゃって帰っていかれました。お手伝いができて、本当にうれしく思っています。